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妖精の可憐さと、雑草魂の根性娘。
今井遥、逆転のソチへ完璧を期す。 

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野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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photograph byAFLO

posted2013/12/12 16:30

妖精の可憐さと、雑草魂の根性娘。今井遥、逆転のソチへ完璧を期す。<Number Web> photograph by AFLO

復調の手応えを感じながら、ロシア杯では9位。浅田、鈴木、村上の上位陣を逆転してのソチ行きには、全日本で周囲をあっと言わせる演技が必要だ。

盲腸で全日本出場を危ぶまれる事態に今井の決断は。

 ショートのプログラムも、2季前の『無言歌』を再び選んだ。

「去年はとにかくショートがボロボロだったんです。今になって思えば、曲と私のスケーティング(のピッチ)が合って無かったんですよね! だから今年は自分を立て直すシーズンにするためにも、気持ちよく自然に滑れるプログラムで確実な演技をします」

 自分らしさを取り戻して迎えた今シーズン。スロバキアでの国際大会に足慣らしで出場すると、連続ジャンプを成功させ163.64点で優勝を決めた。順調な滑り出しだった。

 ところがだ。帰国し、羽田から自宅に戻る途中で身体に激痛が走った。そのまま病院に運ばれると、盲腸で緊急入院。医者からは手術を薦められた。

「手術すると激しい運動ができないので、11月の東日本選手権に出られなくなる。つまり全日本に出られないってこと、それは困る」

 今井の強い意志で、『痛みを散らして様子を見て、生命に危険が及ぶ場合は手術』という選択肢を選んだ。

「何日まで入院するのか、手術が必要なのか、とにかく不安でした。死ぬのは怖くないけど、全日本に出られないのは怖い」

ブランクからの復活はまさに根性だった。

 不幸中の幸いか、手術は回避され4泊5日で退院できた。退院の日は、焦りが抑えられずにリンクへ直行。筋肉が衰え、前に滑るのさえキツイ自分に愕然とした。

 そこからが今井の根性発揮だった。中国杯までわずか2週間。とにかくジャンプを取り戻すことだけに集中した。出場さえ危ぶまれた中国杯は、気迫ある演技で、150.30点をマークし6位。

「ヘロヘロでとにかく体力が落ちていた」

 そう感じると、ロシア杯に向けては体力回復を課題にした。筋力が落ちている中で無理にジャンプをするとケガをすると考え、4分走ってはインターバルを入れる、という陸トレ中心にスタミナをつけた。

【次ページ】 「去年も3週間で40点も上がった。人間できないことはない」

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