フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
ソチ出場の可能性を「将軍」に託す。
無良崇人、全日本にかける熱き想い。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAFLO
posted2013/12/11 10:30
グランプリファイナル出場は逃したものの、全日本一本に照準を合わせ、逆転のソチ出場を狙う。
昨シーズン、フランス杯で初のGPタイトルを手にし、全日本選手権では3位に入賞した無良崇人。2009年以来、4年ぶりに世界選手権の代表に選ばれて、前回の15位から8位と順位を上げ健闘した。
だが今季のGP初戦だったスケートカナダでは、10人中10位というショッキングなスタートになった。無良は今シーズン用に作ったフリー『スパルタカス』を断念し、GP2戦目のNHK杯では、昨年度の『将軍』を滑って総合6位だった。
「新しいプログラムを作ってやっていく中で、去年のものに戻すというのがプライド的に嫌なところはあったが、そんなことを言っている余裕がなかったんです」
NHK杯の男子決勝の翌日、無良はメディア会見でそう語った。
「カナダでの順位があまりにもひどく、ジャンプを跳べないとああいう点数になってしまう。それじゃあいけないよね、と父(無良隆志コーチ)とも話し合った。点数的に見ても、自分の気持ち的にも、戻してやってよかったかなと思っています」
ジャンプの技術は高いが、課題は表現力に。
フリーの振付を担当したのは、3年前から彼のプログラムを担当しているトム・ディクソンである。過去に日本選手では太田由希奈などの振付も担当し、クリエイティブな作風で知られている振付師だ。
「(スパルタカスは)曲自体、自分としては好きだったのですけれど、構成的にジャンプに向けていくところがメインで、全体の表現ができていなかった。強い曲だったので、力が入りすぎてしまうことがデメリットだったかなと思います」
一方昨シーズンのフリー『将軍』は、無良を新しいレベルへと引き上げてくれた記念すべきプログラムだった。
今年22歳の無良は、日本男子の中でも屈指のジャンパーとして知られている。4回転トウループの着氷率も良く、大きな3アクセルの質も高い。ジャンプを教えることにかけては日本でトップと言われている長久保裕コーチに仕込まれた技術である。
その反面、今の日本男子のトップ選手たちと比べると、表現力においてはまだまだ物足りない部分がある。だが『将軍』は彼の大きな体を生かしたダイナミックな振付で、昨シーズンは演技構成点もかなり上がってきていた。