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15歳の新星は練習の鬼で小心者?
宮原知子、ソチを胸に大一番に挑む。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAFLO SPORT
posted2013/12/14 08:01
村上佳菜子、今井遥よりも一世代下、15歳の宮原知子はまさに新世代の旗手。
身長144cmの小さな身体に、か細い声、おっとりした話し方。宮原知子(さとこ)には、他人を押しのけてトップを目指す勝ち気なところはないが、何事も諦めない粘り強さがある。言葉では自分の主張をしない15歳の瞳にも、五輪代表への夢はしっかりと輝いている。
4歳のとき、アメリカでスケートを始めた。習い始めた時のジャンプは逆回転となる右回り。7歳で帰国してからは、濱田美栄コーチのもと他の日本選手と同じ左回りに変更した。
ジャンプ技術を身につける上で「遅れ」になる可能性もあったが、練習中にまったくお喋りもサボりもしない集中力で、あっというまに他の子供達に追いついた。
13歳で出場した'11年全日本ジュニアは「3回転ルッツ+3回転トウ」と「3回転フリップ+3回転トウ」の難しい連続ジャンプを成功させ、浅田真央のジュニア時代の記録を抜く172.17点で優勝を決めた。
教わったことは完全に習得するまで諦めない、基礎練習の鬼。
とにかく努力家で、生真面目に練習する。こんなエピソードもあった。
ジュニアの強化選手だった昨年夏、濱田チームの夏合宿、野辺山でのジュニアの強化合宿、そして中京大でのシニアの強化合宿と、3つの合宿に参加した。各合宿で、ウォーミングアップ向けの基礎フットワークを習った。ターンやステップを組み合わせたもので、トップ選手なら氷に降りて最初の5~10分でこなすような地味な内容だ。
しかし宮原は3つの合宿それぞれで習った基礎フットワークを、毎日氷に降りるたび全種類やらないと気が済まない。結果としてウォーミングアップだけで1時間もかかってしまい、濱田コーチが、「とにかく真面目なので、教わったことは完全に習得するまで諦めない。3つも合宿に参加したことで、基礎練習の鬼になってしまった」と笑うほどだった。
昨季は国内敵なしの強さで、'12年全日本ジュニア選手権を連覇すると、推薦出場したシニアの全日本選手権では、3回転+3回転を軽々と成功。浅田真央、村上佳菜子に次いで3位に輝いた。日本のトップ3に入ったことで、ソチ五輪は現実的な夢へと変わった。