Jをめぐる冒険BACK NUMBER
プレーオフ届かずも、包まれた拍手。
松本山雅が熱烈に愛される理由。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/11/28 10:30
1万6885人が詰め掛けたアルウィンのファンに拍手で送られる松本山雅イレブン。
大逆転のJ1昇格プレーオフ進出まで、あと数分だった。
しかし、彼らの手の届かないところで、夢の扉は閉じられてしまった。
松本山雅が愛媛FCを1-0で下そうとしていたまさにそのときだった、遠く離れた鳥取の地でジェフ千葉が同点に追いついたのは――。
結果を知らない人たちもたくさんいたのだろう、試合終了後、緑のサポーターがかたずを呑んで、場内アナウンスに耳を傾けていた。
「鳥取対千葉は2-2のドロー、長崎対徳島は1-0で徳島の勝利。札幌対北九州は0-0のドロー。以上の結果をもちまして、松本山雅の最終順位は……7位になりました」
直後に漏れた「あぁー」という深い落胆の声。だが、スタジアムはすぐに拍手に包まれた。それは、松本山雅が決して敗者ではないことを示すものだった。
“山雅劇場”を見たいと思っていた。が、なかなか機会を作れずにいるうちに、'13年のJ2も最終節を迎えてしまった。
松本山雅の順位は8位だったが、プレーオフに進出する6位以内の可能性を残していた。このチャンスを逃すわけにはいくまいと、アルウィンに足を運んだ。
今季一番のホームサポーターを集めた最終節。
プレーオフ進出の残り3枠を争う5チーム(4位:V・ファーレン長崎、5位:千葉、6位:徳島ヴォルティス、7位:コンサドーレ札幌、8位:松本山雅)の順位が、得点の経過とともに入れ替わるスリリングな展開については、こちらのコラムに譲るとして、山雅サポーターは聞きしに勝る迫力だった。
この日の入場者数は1万6885人。これは今季の松本山雅のホームゲームで二番目に多い人数である。最も多かったのはガンバ大阪戦の1万7148人。だが、このときはかなりのガンバサポーターが駆けつけたため、ホームのファン・サポーターの人数では、最終節のほうが多いという。
松本山雅は前半、サポーターが陣取るゴール裏に向かって攻めていき、後半はサポーターの声援を背中に受けて攻め込んだ。