Jをめぐる冒険BACK NUMBER
プレーオフ届かずも、包まれた拍手。
松本山雅が熱烈に愛される理由。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/11/28 10:30
1万6885人が詰め掛けたアルウィンのファンに拍手で送られる松本山雅イレブン。
セットプレーと体力が、最大の武器。
少しでも勝率を高める手段として、セットプレーへのこだわりも見て取れる。反町監督に請われ、湘南ベルマーレから期限付き移籍でやってきた岩上祐三が蹴るプレースキックはニアやファーに蹴り分けられ、とにかく精度が高いのだ。
「うちはCKから11点を取っている(※10月31日時点。その後さらに1点を追加)。CKから10点以上取っているチーム、たぶんないぞ」と、反町監督はシニカルな笑みを浮かべて言う。
今や名物にもなった岩上のロングスローにしてもそう。ターゲットは複数に渡り、こぼれ球へのサポートも何パターンかありそうだ。ファーサイド、ニアサイド、山なり、ストレートと球種を投げ分け、相手に揺さぶりをかけている。
1日2時間半にも及ぶ厳しい練習も、体力と集中力、メンタリティを鍛え、できることを徹底的に磨きあげるためのもの。1-0で凌ぎ切った愛媛戦は、まさに松本山雅らしいゲームだったと言えるだろう。
「ラフプレーが多くては、子どもたちに示しがつかない」
試合後のセレモニーや会見の場で「勝点1の重み」を説き、来季のリベンジを誓った反町監督が力を込めてアピールしたのは、反則ポイントの少なさだった。
Jリーグでは警告や退場を数値化した反則ポイントを設定している。最終節を戦い終えて、G大阪に続いてそのポイントが少なかったのが、松本山雅だったのだ。
反町監督は就任した最初のミーティングでフェアプレーの重要性を話したという。JFL時代の松本山雅はとにかく警告や退場が多く、それが成績に悪影響を及ぼしているのが明らかだった。
監督就任のあいさつ回りをした際には、スポンサー企業の社長から「ラフプレーがあんなに多くては、子どもたちに示しがつかない。減らす努力をしてください」と頼まれている。
当然のことながら、11人で戦うのと10人で戦うのとでは、結果が大きく左右される。ただでさえ厚いとは言えない選手層なのに、出場停止の選手が出てくれば、戦力が著しく落ちてしまう。