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マイケル・ワッカと秋の若武者。
~Wシリーズで奮闘した超新星~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2013/11/02 08:01
カーディナルスを牽引してきたワッカ(右)とモリーナ。2人の夢は第6戦で潰えた。
16年前、さらにその16年前にも驚嘆に値する新星が。
アストロズと戦ったディヴィジョナル・プレーオフ(当時はそう呼ばれていた)では2試合に先発して、1勝0敗、防御率=1.06。エクスポズと対戦したNLCSでも、やはり2試合に先発して1勝1敗、防御率=2.45。ヤンキースを降したワールドシリーズでは、1試合に先発して1勝0敗、防御率=4.00。ポストシーズン全体では40回3分の2を投げて、3勝1敗、防御率=2.21。あっぱれな成績といってよいだろう。
そういえば、1997年にはリバン・エルナンデスが輝いた。'75年2月20日生まれの彼は、22歳。新興マーリンズの快進撃は、彗星のように現れた彼の好投によるところが大きい。
ジャイアンツと戦ったNLDSでは救援で4イニングスを投げて防御率=2.25。ブレーヴスと対戦したNLCSでは、1試合に先発、もう1試合に救援で投げて、2勝0敗、防御率=0.84。そして、インディアンスを降したワールドシリーズでは、2試合に先発して2勝0敗、防御率=5.27。表面的な数字が示す以上の活躍が評価され、エルナンデスはシリーズMVPに選出された。
エルナンデスはバレンズエラの16年後に出現した。ワッカはエルナンデスの16年後に登場した。数字の符合は偶然の一致にすぎないだろうが、驚嘆に値する新星は、やはりめったに出現しない。
レギュラーシーズンと同じ勝ち星を稼いだ22歳。
'91年7月1日生まれのワッカは、現在22歳だ。パイレーツと戦ったNLDSでは1試合に先発して1勝0敗、防御率=1.23。ドジャースと対戦したNLCSでは、2試合に先発して2勝0敗、防御率=0.00。そして、最後に乱打されたワールドシリーズでは、2試合に先発して1勝1敗、防御率=7.45。
敢闘賞に値する成績ではないか。ワールドシリーズ第2戦の勝利で、彼はエルナンデスが持っていた新人のポストシーズン最多勝利(4勝)に並んだ。つまり、カーディナルスのポストシーズンの勝ち星の半分近くは、ワッカが稼いだことになる。レギュラーシーズンで9度だけ先発して4勝1敗の成績しか残せなかった新人投手(大リーグ・デビューは2013年5月)が、ポストシーズンで同じ勝ち星を稼ぐというのは稀有な光景だ。