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結果への執念で全てねじ伏せる!!
松山英樹流、迷いと不安の解消法。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAP/AFLO
posted2013/08/18 08:01
全米プロ3日目はショートパットを外すなどスコアを落としたが、最終日で66をマーク。来季の米ツアーシード権は確実となった。
「ダメだ、今日は」と言い放ち、練習場を後にした。
「この向きで合っているのか?」
指摘を受けたポイントで不安が頭をよぎると、ショットが乱れていく。
「出来は悪くはないけど、不安が出てくる」
「少し迷いがあった分、ミスが大きくなった。全然身についていない」
新たな取り組みが、一朝一夕で身に付くはずがない。理解はしていたが、イライラを抱えながらのプレーが続く。
珍しいことがあった。3日目の朝の練習場で球が曲がり続け、思うようなショットが打てなかった松山は「ダメだ、今日は」と、思わずこぼし、ティオフして立ち去ったのだ。練習場でイライラすることはこれまでもあった。だが、よいショットが打てないままに練習場を後にする姿は今まで見なかったものだ。
それでも全米プロの最終日にはベストスコアに1打と迫る66をマーク。今季わずか6試合の出場で約67万ドル以上を稼ぎ、来年度の米ツアーのシード権獲得を確定させた。
「お前はこの試合でこれだけ稼がなくてはいけない」
不安やプレッシャーを消化しながら、結果を出す。この勝負強さの要因とはなんだろう。
「いまはシードを取るという目標がある。だからコースに出たら、疲れているとか、スイングがどうのと言っていられない」
そう話すのは、松山の遠征に帯同する東北福祉大学の阿部靖彦監督である。
監督は入学当時から現在を振り返りながら「松山は常に何か目標を与えてやった方がいいタイプ。だからアマチュアの時から学生の大会、アジアアマ、全米アマ……とその都度、目標を明確にしてきた」。ツアーに出れば、上位を目指すのは選手なら当たり前だ。だが、まずは実現可能な最低限の目標に向かって邁進する。
シード獲得に向け重要な2試合だったWGCブリヂストン、そして全米プロでは、監督は松山にそれぞれの大会の賞金分配表を見せていた。「シードを取るために、お前はこの試合でこれだけ稼がなくてはいけない。だから何位までに入らなくてはいけないよ」と現状と照らし合わせて、目標を再確認した。WGCでは10位以内、そして全米プロでは20位以内がターゲットだった。
そして全米プロ最終日、松山は最終ホールで2メートル弱のパットをねじ込んでパーを拾った。クラブハウスに引き上げる際、松山は監督の顔を見るや「(シード獲得が)決まったっすよね!?」と顔を紅潮させて言った。19位タイでの目標達成。スイングの修正に頭が傾くのではなく、数字と結果への意思を強く持った姿だった。