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サザンオールスターズと山本昌──。
茅ヶ崎が生んだ奇跡のおじさん達。 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

PROFILE

photograph byNaoya Sanuki/JIJI

posted2013/07/01 11:00

サザンオールスターズと山本昌──。茅ヶ崎が生んだ奇跡のおじさん達。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki/JIJI

茅ヶ崎市民栄誉賞の歴代受賞者には、山本昌以外には、俳優の加山雄三、宇宙飛行士の野口聡一と土井隆雄、テニスの杉山愛らがいる。

勝敗を問わず真摯に向き合ってくれる昌さんの人間性。

 そう語るのは、“世界で一番山本昌情報が載っているタウン誌”を自負する「タウンニュース」茅ヶ崎編集室で、自腹を切ってまで山本昌を追い続ける瀬戸嘉仁さん。

「親子ほどの年の差がある僕なんかが偉そうに言える立場じゃありませんが、昌さんは野球人としての功績もさることながら、その人間性の素晴らしさに驚かされます。

 今年はずっと追い掛けさせてもらっているのですが、先日の交流戦でロッテに1回1/3でKOされた時も、誰とも話したくないような厳しい結果でもちゃんと正面から向き合って話をしてくれました。『40歳を超えてから突き抜けた』と仰るように今なお球速が上がってしまうほど、野球に対してとことんストイックでありながら、どんな時も相手を思いやってくれる。そういうところがたまらなく魅力的です。何より僕らにとっては、言葉の端々から故郷を大事にしてくれているということが伝わってくるというか……大袈裟に言えば茅ヶ崎を背負って投げてくれている、というようなところが感じられますからね。もう大ファンですね」

 そんな山本昌も200勝を達成してからの、この5年間は引退の危機と、そこからの復活の繰り返しだった。

引退の崖っぷちから、昌ピーのG★スポットで大復活!

 '08年の200勝達成時で43歳。翌年には不調に陥り、記録達成を置き土産にさよならベイビーとなるかと思いきや、'10年の後半戦に最年長完封記録を含む5勝を挙げて復活。しかし翌'11年には右足首の腓骨筋腱の故障で一、二軍とも登板がなく、もはやこれまでかと思いきや手術を経て復活。2012年、自主トレ中に「お前が開幕投手だ」と耳元で言った、そんな守道に騙されて、急ピッチで調整したおかげで、4月には足踏みしていた杉下シゲルのテーマである球団最多勝利記録を抜く212勝を挙げたが、その後は夏をあきらめて二軍落ち。さすがにもうダメかと引退を示唆するも、秋のクライ哀、もとい、クライマックスシリーズで好投。

 引退の危機を乗り越え、前人未到のプロ野球生活30週年を迎えた今季は、春先にインフルエンザで出遅れるも、見事に復活。4月9日に初勝利を挙げると、史上6人目の500試合先発となった6月23日の巨人戦では5回4失点ながら、希望の和田たちの援護もあって今季3勝目をマーク。現役最多の巨人戦通算42勝目を挙げ、昌ピーのG★スポットの健在ぶりを証明。喜びのあまり捕手の小田幸平を呼んで、揉んで、抱いて、いい気持ちになったりしていた。

 通算216勝、現在、47歳10カ月。よどみ萎えた時も乗り越え、枯れて舞う独特のいなせな投球モーションで活躍し続け、現在もローテ投手として試合を作る姿には、熱い胸騒ぎを覚える一方、地元ながら指名を見送ってしまった大洋は罪なやつとつくづく悔やまれる。

【次ページ】 息が長すぎるサザンと昌さんは日本が生んだ奇跡である。

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