日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
イタリア相手に歴史的打ち合い。
誇りを取り戻したレシフェの夜。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/06/20 16:55
「(世界のサッカー強豪国との)距離とかは今、わかりません。負けは負けなので。勝つためにもっと強くならなければいけないな、とは思いますけど」と試合後、冷静に答えていた岡崎。
敗れたとはいえ、ザッケローニの機嫌は良かった。
いい守備から、いい攻撃につなげる。
前田や本田がサイドに流れながら、サイドで数的優位をつくってスピードアップしていく。単純に長いボールを入れてゴールに向かうシーンもあれば、細かいスピーディーなパスワークで崩しにかかるシーンもある。サイドチェンジのゆさぶりも効果的で、イタリアのスタミナを確実に奪い取っていった。
縦幅、横幅とピッチを広く使おうとするザックジャパンの特徴がよく出ていた。そしてそれが世界の強豪相手でも十分に通用することが分かった。
後半24分に岡崎のゴールで3-3の同点に追いついてからも、日本は怒涛の攻撃で何度も決定機を迎える。スピーディーなパスワークにイタリアがついていけなくなり、勝ち越しゴールの気運が高まっていく。
しかしながら歓喜のゴールを奪ったのは日本ではなく、イタリアだった。後半41分、今野のクリアを拾われ裏にボールを出されて、マルキージオのクロスをジョビンコに決められた。
ザッケローニは母国にひと泡吹かせるチャンスだっただけに、とても残念そうな表情に変わった。
「今夜は常に点数が変わっていった。特に後半がそう。多くのチャンスをつくって、あきらめない戦いができた。スペースも埋めて、イタリアにそれほどチャンスをつくらせなかった。このようにプレーすると通常、勝ちという結果を得られるのだが、このゲームに勝ったチームが勝者だということだ」
だが総じてザッケローニの機嫌は良かった。自分たちのスタイルを取り戻し、そのスタイルが世界に通じる希望を持てたのだから。
世界の強豪たるイタリア相手に、攻守にわたって収穫はあった。
7ゴールも飛び出し、世界の列強とこんなに打ち合いになったことなどA代表の歴史においてない。耐えて1点をもぎ取って勝利する試合はあっても、このように3点を奪い、なおもあと2点は追加できたんじゃないかと思えた試合はまずもってあるまい。
コンフェデレーションズカップは公式戦だが、あくまでブラジルW杯を見据えたうえで準備を図るための試合と位置づけることができる。その意味において、攻守にわたって通用したこと、しなかったことをイタリア相手にしっかりと把握できたというのは大きな収穫だと断言できる。
マンオブザマッチ受賞で会見場に現れた香川の悔しそうな顔つきが印象的だった。
「後半に入ってチャンスはあったけど、僕自身も決められなかった。逆にイタリアは数少ないチャンスを決めてきたので、その差を感じます」
ザックジャパンが世界との距離を縮めている実感を持てているからこそ、心の底から悔しいと思えているのだろう。
イタリアをびびらせた、価値ある敗戦――。
ブラジル戦で失いかけたザックジャパンの誇りを取り戻すことができた、レシフェの夜だった。