「あいつらが一軍で勝てているんだったら、俺も」

　八木の不調をよそに、同期の赤川、日高は一軍デビュー。赤川は3年目にローテーション入りし、日高は中継ぎ投手として初勝利を挙げていた。

「悔しかったですよ。朝は一緒に戸田の寮（二軍）にいて、僕とは違うところに行くわけですから。でも、赤川や日高はライバルですけど、いい刺激になっていました。プロに入った時は、同じような期待をされていたわけじゃないですか。あいつらが一軍で勝てているんだったら、俺もできるんじゃないかって、2人の活躍がありがたかった」

　もちろん、背番号変更の通達を受けた時はショック以外の何物でもなかったが、素直に受け入れる自分がいたのも事実だった。

　左肩の故障が癒えると昨季からは持ち味のストレートが活きるようになった。

　球速は140キロ程度なのだが、打者を詰まらせる。持ち球のスローカーブが100キロという緩急差もあるのだろう。「球速より、打者の反応。フライをとれるかどうかが生命線」と語るように、打者の想像以上に切れるストレートが八木の武器となった。

好投すれども勝ち星が付かない不運に見舞われてはいるが……。

　開幕3戦目に今季初先発。その相手は、ゴールデンルーキーの阪神・藤浪だった。

　阪神の守備にミスがあったとはいえ、八木は粘り強く投げて7回を無失点。藤浪に土をつけ、自身はシーズン初勝利を挙げた。

「藤浪とは今季4回対戦しているんですけど、勝っても負けても取り上げられるのはあっちなので、気にはしていないんです。自分は、（レギュラーの）当落線上という中で今季初先発の試合には勝てたので、ほっとしたという気持ちの方が強かったです」

　八木は今季、その1勝しかまだ挙げられていない。好投すれども勝ち星が付かないという試合が多く続いたのだ。交流戦に入ってここ3試合は序盤でKOされる投球が続いたが、防御率は3.52とそれほど悪くなく、セ・リーグとの対戦では7試合中5試合で、6回を3失点以内に抑えるクオリティスタートを果たしている。

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