日本代表、コンフェデ道中記BACK NUMBER
イラク戦は単なる消化試合ではない。
ドーハで20年前ではなく未来を想う。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2013/06/11 12:00
ドーハでの練習後、「何があっても、この代表にいる時はしっかり役割を果たすつもり」と語っていた中村。本田、長谷部らが外れるイラク戦でも、当然“勝ち”を狙っていくつもりだ。
イラク戦は単なる〈消化試合〉ではない!
ほぼ20年ぶりとなるドーハでのイラク戦は、W杯予選突破後の〈消化試合〉である。勝敗を問われない一戦だ。
ベストメンバーを組むことは望めない。
キャプテンの長谷部誠は、累積警告で出場停止だ。冒頭15分のみが公開された前日練習から判断すると、本田圭佑、吉田麻也、栗原勇蔵の欠場も濃厚だ。別メニューで調整した本田が穏やかな面持ちでバスへ乗り込んだ一方で、「一昨日くらいから太股裏に痛みがある」と話した栗原は表情に悔しさをにじませた。
4日後にコンフェデレーションズカップの開幕戦が控え、中東から南米への移動で蒸し暑さが誘う倦怠感が忍び寄ることを考えれば、主力選手は温存していい。先のオーストラリア戦から、先発を総入れ替えしてもいいぐらいだ。
もっとも、ザックことアルベルト・ザッケローニ監督による堅実な手当ては、前述の4人に加えて両サイドバックの変更くらいだろうか。「W杯予選突破は決まりましたけど、負けてもいい試合なんてないです。チーム全員で勝利を目指す姿勢に変わりはありませんよ」と、酒井高徳は語気を強めた。吉田と栗原の欠場でいつもと同様に先発が予想される今野泰幸も、「イラクがどういう特徴なのか、どこに穴があるのか、ミーティングで確認してきた。そういう意味では、誰が出てもやることは変わらない」と落ち着いた口ぶりで話す。
もし負けたとしても失うものはなにもない……のか?
2大会ぶりに出場するコンフェデ杯で、ブラジルやイタリアなど世界の強豪との対戦が控えていることもあり、イラク相手に勝利を求める空気は薄い。チームへの注目度を示す取材者の数も、オーストラリア戦との比較がはばかられるほど少ない。
負けたところで、チームが失うものはない。個々の選手にとっても、コンフェデ杯への助走になればいい。今回のイラク戦には、様々なエクスキューズが成り立つ。
しかし、この試合をW杯予選突破後とコンフェデ杯開幕前の〈谷間〉と位置付けたら、そもそも何ひとつ得られない。イラク戦はこれまでとこれからが重なり合う、大切な〈点〉であるべきなのだ。