黄金世代、夢の行方BACK NUMBER
パラグアイ戦で代表復帰も!?
小野伸二がJリーグで輝いている理由。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO
posted2010/08/20 10:30
もしかしたら9月4日のパラグアイ戦で、小野伸二が見られるかもしれない。
それほど、小野が好調だ。
首位争いを演じる清水エスパルスにおいて、小野の果たす役割の大きさは、これまで何度も言われてきたが、あらためて見ると技術、動きの質、キレ、運動量はチーム随一。パラグアイ戦と言わず、4年後のブラジルW杯さえも期待してしまうほどだ。
圧巻なのが、動きの質と量だ。以前であればパスを出した後、そこでパスの余韻に浸ることが多かったが、今はパスを出した後、さらに動き出してもう一度ボ-ルに絡んで決定的な仕事をしている。特に暑い夏場だと、どうしても疲労を考慮して動きをセーブしがちだが、小野の場合は嬉々として動いてプレーしているように見えるのだ。
「動けているのはコンディションがいいからでしょ。今年はここまでケガがない。やっぱりケガがないのが一番大きいですよ。どこか痛いと思い切りできないからね。だから本当にいい状態でやれている。日本の夏は2年ぶりだけど、特別なことは何もしていない。今まで通り、トレ-ナ-に見てもらいつつ自分のペ-スで調整している。まぁあとは、自分は年齢的に上の方なんで、自分が動けば若い選手も動かざるを得ないでしょ。うちのサッカ-は止まったら終わりなんで、そこは意識しています」
小野は、そう語ると日焼けした表情を崩した。
タイトル獲得への意欲が小野を突き動かす。
何が小野を、まるで18歳のルーキーのように動かすのか。
ひとつはタイトル獲得への意欲だ。
小野はオランダではフェイエノールト、日本では浦和と国内外で強豪クラブに所属してきたが、実は、本心から自分が中心選手として獲得できたと思えるようなタイトルは少ないと思っているようだ。欧州時代のUEFAカップは、タイトルを獲得した喜びはあったものの、まだ自分がチームの中心選手ではなく「優勝した試合に出られた」という感じがしたという。
だが今回は違う。
鹿島、名古屋とともに優勝争いを演じ、チームにおいて真に中心的な役割を果たしている。
「自分が清水に入ったのもタイトル獲得のため。そのためにチームの中で自分に何ができるか。今はそれしか考えていないし、勝つことに集中している」
小野の決意が示すように、タイトルへの激しい衝動が彼を突き動かしているのだ。