黄金世代、夢の行方BACK NUMBER
パラグアイ戦で代表復帰も!?
小野伸二がJリーグで輝いている理由。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO
posted2010/08/20 10:30
W杯で見たミドルシュートを試み、さらなる進化を!
もうひとつは、南アフリカW杯だ。
ドイツW杯以降、「代表は悔しい想いしかない」と語る小野だが、南アフリカW杯はメンバーにも選出されなかった。落選した翌日には「1%の可能性に賭けたけど、残念です」と悔しそうな表情を見せた。だが、'98年のフランスW杯以来、初めて参戦できなかったW杯は、少しばかり新鮮に映ったようだ。マラドーナを見て興奮した幼少の頃に戻ったように、世界トップクラスのプレーや熾烈な試合内容に刺激を受けた。
例えば第18節のマリノス戦では2本の強烈なミドルシュートを放ったが、これも南アW杯の影響である。
「課題であるミドルを打ったけど、決まらなかった。まぁミドルは相手が引いた時とかはいつも狙っているし、世界のトップクラスの選手は、みんな決めているからね。オランダのスナイデルも日本戦で決めたでしょ。ああいうシュートは刺激になるし、決めれるようになると相手にとって、もっと恐い選手になれるからね」
小野はW杯を観て刺激を受けたプレーをすぐに実践していたのだ。それは、彼がプレイヤーとしてさらに成長しようとしている証であり、また代表のレベルで世界と対峙した時、勝利に貢献するプレーをしたいという強烈な想いの現れでもある。
「今はブラジルW杯なんて考えられない」と語るが……。
小野は代表については「今は、正直、ブラジルW杯なんて考えられない。ブラジルは面白そうだなって思うけど、今はチームのために貢献するのが一番。その結果の後に、それ(代表)が付いてくればいいと思う」と少し距離を置いている。それが本心なのかどうかはまだ分からない。監督が決まる前に代表について、あれこれ話をしたくない気持ちもあるのかもしれない。
しかし今の小野は、日本で最も技術レベルが高く、ピッチ上で愉しさを表現できる選手だ。その存在感は、ガンバ大阪の遠藤保仁に劣るとも思えない。南アフリカW杯で活躍した遠藤と変わらない質の高いプレーをコンスタントに見せている。
中村俊輔との対決で際だった小野ならではの南米的な巧さ。
第18節のマリノス戦は、遠藤と同じく日本代表のエースとして永らく活躍してきた中村俊輔との対決でもあった。
この試合は、1アシスト1ゴールを決められ、軍配は中村俊輔に上がった。「俊は、しっかり押さえないといけないけど、やっぱりうまい。アシストも左足で蹴ると見せ掛けて右だし、FKもファーを狙うフリしてニアに決めた。これは、もう俊の個人能力の高さだし、やられたって認めるしかない」と、小野は苦笑したが、中村俊輔のようにオーソドックスに巧い選手と戦うと小野の南米的なちょっと悪戯っぽい巧さがより際立つ。そんなプレーをできるのも日本では、小野だけである。
このままチームで結果を出し続ければ、小野のプレーはさらに評価されるだろう。それが新しい代表監督にも伝われば……、ドイツW杯の屈辱、南アフリカW杯落選の口惜しさを晴らすため、ブラジルに向けて新たなスタ-トが始まるはずだ。それは、また小野を知る多くのサポーターの願いでもある。