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“モウリーニョの亡霊”を
ベニテスは振り払えるか?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byREUTERS/AFLO
posted2010/08/23 10:30
新監督就任会見時のラファエル・ベニテス。インテルでのタイトル獲得に意欲を見せた
戦力補強には口出しせず、イタリアの流儀に対応。
スペイン人新指揮官は、移籍市場戦略についても専門ディレクターに一任し、イタリア流へ柔軟に合わせている。“ラファリューション”の肝でもあった選手構成のラテン化は、もともと超多国籍軍団だったインテルには必要なしと判断した。
問題児FWバロテッリがマンチェスターCへ放出となったが、ベニテスは「彼がいなくとも、インテルには昨季と同じくらいの競争力がある」と、これを容認した。今夏市場におけるクラブの消極的方針によって、リバプール時代の愛弟子MFマスチェラーノ獲得の線も薄い。一線級5人を獲得した昨夏とは完全に好対照だが、それでも国内リーグを制するには十分な戦力と言えるだろう。
不安視する外野の声をかき消すためには「勝利が最優先」。
不安視されるのは、6年間のリバプール政権で一度もプレミアリーグを制したことがない、ベニテスの勝負師としての“詰めの甘さ”だ。しかしベニテスは、モウリーニョと比較されることを承知の上で、外野の声をかき消すには結果を出すことが最善の策だと心得ている。
「サッカーの世界にはさまざまなスタイルがあり、そのうちのどれが優れているかを言い切るのは難しい。私の哲学は、手持ちの選手をベースにした、いいサッカーをしながら勝つこと。その両立が無理なら、まずは勝つことを優先する。プレーの質を上げるのはそれからだ。すべての目標に向けてひとつずつ、一歩ずつ進んでいく」
シーズンの開幕を告げるスーパーカップ戦での勝利は、チーム内に一体感と求心力を生み、指揮官へは何より自信を与える。来るべき2つのタイトルに、ベニテスが期するものは格別大きい。