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ベテランだけに任せておけない!!
阪神快進撃を支える若虎たちに注目。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/07/22 10:35

ベテランだけに任せておけない!!阪神快進撃を支える若虎たちに注目。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

周辺メディアもビッグネームを常に欲しがる体質に。

 メディアもしかりである。

 やっぱりビッグネームが試合に出ている方が落ち着く。彼らが出場して活躍すれば新聞は売れるが、逆に世間にそれほど露出のない選手が出て敗れれば、新聞はまったく売れないということになってしまう。知名度の低い若手選手は紙面を埋める雑感程度に盛り上げはするが、大きくは扱えない。人気球団の周辺にはそうしたジレンマが常にある。

 過去の阪神に、若手の抜擢が全くなかったわけではないが、一過性のものが多かったように思う。上園啓史はルーキーイヤーに8勝を挙げて新人王に輝いたにもかかわらず、翌年からはファーム暮らしが多くなった。同じく1年目の終盤に一軍に昇格した石川俊介もそうだ。

 ベテランがいつまでもその席にしがみついている……と言いたいのではない。単に阪神という人気球団が抱える避けがたい体質の問題なのだ。

今年は若手が一軍に昇格しチームを活性化させている!

 しかし、その流れに変化が出てきた。

 昨年の終盤以降に活躍の兆しを見せた、大和、西村憲が今年も一軍に残り、キャンプからは新人の藤川俊が抜擢された。開幕後、先発陣の不調からローテを奪ったのが5年目の鶴直人で、6月末に横山、藤原正典と立て続けに若手がファームから這い上がって来た。

 横山は結果を残せずにファームに舞い戻ったが、藤原は上本のように首脳陣を納得させるパフォーマンスを見せつけている。

 藤原はキャンプから一軍入りを果たしたが、その途中で怪我を患い離脱した。しかし当時から首脳陣の期待は高く、オープン戦の頃には山口高志ピッチングコーチが「キャンプで見た時は、(藤川)球児の前で使えると思った」と自信満々に話していたほどだった。

 故障が癒えて、6月29日に一軍初昇格。デビュー戦は散々で、同日の中日戦で打ちこまれている。ところが藤原という男は大学時代から「挫折があった時、それを何とかしようと思うから力がつくんです」と言い切るほどのポジティブ・シンキング。キャンプ中の練習試合で中田翔に特大の本塁打をくらった時には「2年前に筒井(和也)さんが中田に打たれていた。いま、筒井さんが活躍されているんで、中田に打たれたのはいい運だなって思っているんです」とまで語っていたほどだ。

【次ページ】 “超前向き男”藤原正典もついに一軍初勝利を飾った!

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