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今季、気になる“世代交代”の主役は?
楽天・西田哲朗とロッテ・江村直也。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/03/26 10:31
楽天の春季キャンプ・紅白戦での西田哲朗の溌剌としたプレー。早く怪我を治して、本調子で松井とポジション争いを繰り広げて欲しい。
注目されるほどに力を発揮する「ここ一番」の勝負強さ。
だが、思い切りのいいスイングから長打も放てるバッティングと、強肩を生かしたスケールの大きい守備に加えて、西田にはもう一つ魅力があった。
それは、どんな場面にも物怖じしない性格。高校時代から「ここ一番」の勝負強さはスカウトからも驚嘆の声が上がるほどだったのである。
関大一高時代、2年の秋まではそれほど注目される選手ではなかったが、高校3年春、ある試合を境に脚光を浴びるようになる。その試合とは、センバツに出場予定だった金光大阪との練習試合。西田は、金光大阪にいた当時の大阪No.1スラッガー・陽川尚将(巨人育成指名も拒否、現東農大)を視察に多くのスカウトが訪れることを見越して、絶好のアピールの機会と試合前から意識していた。そこで西田は、陽川の存在も霞んでしまうほどの本塁打を右中間へ見舞ったのだ。
その瞬間から、西田はドラフト候補の相手チームの選手という存在からドラフト候補の1人として注目されるようになった。
3年夏の大阪府大会1回戦では、10球団22人のスカウトが集結する中で、その一振り目をスタンドに叩き込むと、なんとその日にサイクル安打までを達成。相手が格下だったということもあるが「注目されて、僕らスカウトが来ていることを知っている中でのこの活躍は凄い」とスカウト陣も舌を巻いていた。
「名前を知ってもらえるように、今シーズンは頑張る」
3月21日のオープン戦に話を戻す。
松井が2打席のみで途中交代すると、西田は遊撃手のポジションについた。そして、6回表、無死一、三塁の好機で打席に立つと……。
武田勝のチェンジアップを完ぺきに捉え3点本塁打を放つ。
松井が復帰して、スタメンを外れた試合でのこの活躍には恐れ入ったものだ。それも、試合前には「調子が悪い」と言っていたにもかかわらず、である。
「ずっと安打が出ていなかったので、1本出したかった。ランナーがいたので、返そうという気持ちで打席には入りました。ホームランになってよかったです」
4年目になる西田は、プロで言うと、堂林翔太や今村猛(広島)、菊池雄星(西武)、筒香嘉智(DeNA)、今宮健太(ソフトバンク)、秋山拓巳(阪神)の同世代に当たる。ここ3年間ほど、この世代は毎年1人ずつブレイクしているように見える。西田も是非同期のブレイクに続きたいところだろう。彼らのような「甲子園出場」というブランドこそないが、能力で劣る気は毛頭ない。
「僕は甲子園に出ていませんけど、去年の堂林の活躍は刺激になりました。名前を知ってもらえるように、今シーズンは頑張りたい」
果たして今シーズンが、西田にとって松井を脅かすような1年になるかどうか……。