濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
皇帝ヒョードル、1Rでタップアウト。
衝撃の番狂わせが生む2つの転機。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byGetty Images
posted2010/07/04 08:00
時代の終わりと新メディアの勃興。
とりわけ衝撃を受けたのは、日本のファンだろう。リングスによって発掘され、PRIDEで伝説を築いたヒョードルは、精神的には“日本代表”として見られていた。ロシア人であろうと、現在の主戦場がアメリカであろうと“我らがヒョードル”だったのである。ヒョードルの伝説が崩壊したことは、PRIDE買収、青木真也の敗戦に続く“格闘大国・日本”の終焉という意味もあった。
ましてこの試合は、単なる“海外ニュース”として知れ渡ったのではなかった。日本でもインターネットによるPPV(ペイ・パー・ビュー)生中継が実施され、多くのファンがリアルタイムでヒョードルのタップアウトを目の当たりにしたのだ。文字を読み、そののちに映像を見るという段階を踏んだ“情報確認”ではなかったからこそ、衝撃は倍化したのである。
PRIDEから続いてきた伝説の崩壊と、ネットPPVによる新たな観戦スタイルの普及。ヒョードルvsヴェウドゥム戦は、二つの意味で時代の転機となった試合として記憶されることだろう。