濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「ここは本当に日本なのか……」
UFC、世界最大の格闘技団体の証明。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2013/03/04 14:30
今まで聞いたことがないような大声援の中で繰り広げられたメインイベントの名勝負。シウバの拳がスタンの顔面に食い込む!
“USA”と“ブラジル”のコールが会場を揺るがす!!
星条旗を振る者がいる。“USA”コールが発生する。それを“ブラジル”コールが押し返す。一瞬も止まない大声援の中で、シウバとスタンはノンストップの打ち合いを演じた。
先に仕掛けたのはスタン。
“待ち”の構えだったシウバを金網際に追い込む。空振りで自分が転倒してしまうほどのフックをスタンが放てば、シウバも連打で応戦。さらにヒザ蹴りを顔面に突き立てると、スタンは大量出血に見舞われた。
それでも攻防は終わらない。スタンのパンチでシウバの腰が落ちる。シウバはニヤリと笑って「こいよ!」と挑発。ケージの中も客席も、ボルテージは高まる一方だ。
フィニッシュは2ラウンド。シウバが鋭い踏み込みから右フックをクリーンヒットさせる。続いて左のフォロー。ダウンしたスタンにとどめのパウンドを4連打したところで、レフェリーが試合を止めた。
観客全員がスタンディング・オベーションでシウバを称賛。
その瞬間から、場内の空気は完璧なハーモニーを奏でるようになった。
観客は総立ち。スタンを応援していたアメリカ人たちも、シウバにスタンディング・オベーションを送っている。意識を取り戻したスタンがインタビューに応えると、会場中から拍手が送られた。
ブラジル人はブラジル人を、アメリカ人はアメリカ人を応援する。
そのことで生み出される熱気が、UFCを世界最大の団体たらしめる重要な要素でもある。だが、命を削るような打ち合いとKO決着を称賛する気持ちは万国共通なのだ。
試合後のシウバは「最高の気分だ」という言葉を繰り返した。会場を訪れた14642人全員が同じ気持だったに違いない。