濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「ここは本当に日本なのか……」
UFC、世界最大の格闘技団体の証明。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2013/03/04 14:30
今まで聞いたことがないような大声援の中で繰り広げられたメインイベントの名勝負。シウバの拳がスタンの顔面に食い込む!
3月3日のUFC日本大会を見ながら、何度も不思議な感覚に襲われた。
会場はさいたまスーパーアリーナ。でも海外で大会を見ているような気持ちになる瞬間があったのだ。
メインイベントに出場したのは元PRIDEミドル級王者のヴァンダレイ・シウバ。セミファイナルにはK-1ワールドGPを制したマーク・ハントが起用された。五味隆典をはじめ日本人選手も数多く出場しており、日本の観客向けにローカライズされた大会ではあるのだが、観客は日本人ばかりではなかった。
やはりUFCは世界最大の格闘技団体。場所がどこであろうとも、大会は国際イベントなのだ。おそらく日本在住の外国人なのだろう、韓国人選手には「ファイティン!」の声援が飛び、ブラジリアン・ファイターの試合になるとポルトガル語のチャントが発生する。
他のスポーツにたとえるならサッカーのクラブW杯だ。会場の外では、ブラジル国旗を掲げた岐阜ナンバーのバスを2台見た。海外から駆けつけたファンもいたかもしれない。
判定決着の試合も多かったが、会場のムードは決して悪くなかった。試合をじっくり見るのではなく、思い思いに叫び、騒いで楽しむスタイル。日本の大会にはなかなかない、UFCならではの雰囲気である。
凄まじい歓声が送られた、ヴァンダレイ・シウバの入場シーン。
そんな会場の空気が爆発したのは、セミファイナルだった。
マーク・ハントが身長213cmの巨人ステファン・ストルーブを豪快なKOでマットに沈める。そしてメインで、興奮はピークと思ったセミを、さらに超えることとなった。
ヴァンダレイ・シウバの入場に、凄まじい歓声が送られる。
日本人のファンにとっては、愛してやまないPRIDEの象徴。ブラジル人にとっても母国の英雄だ。対するブライアン・スタンは横田基地の生まれ。自身も海兵隊の将校としてイラク戦争で勲章を授けられている。ニックネームは“オール・アメリカン”。彼の登場に、アメリカ人の観客が沸き返った。