野球善哉BACK NUMBER
浅村栄斗と金子侑司が新時代を築く!!
あえて同級生を競わす西武の育成法。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/02/10 08:01
春季キャンプでは、ドラフト1位の投手・増田達至とともに1軍入りとなった金子。「金子は遊撃を守れるので、他の選手と競争させたいと思っている」と渡辺監督の期待も大きい。
もっとも期待されているのは浅村だが……。
浅村は「ポスト中島」にもっともふさわしい選手といっても言い過ぎではないだろう。
3年目にブレークを果たし、同年10月の月間MVPを獲得。昨季は終盤の大事なゲームで 1番を任されるなど、チームの顔へと成長する階段を着実に昇っている。華麗なプレースタイルであるがゆえ、堅実には見えにくい彼の守備に課題も挙げる人もいるが、入団してからこれまでの道のりには、「ポスト中島」としての期待が感じられる。
浅村は昨季までに、セカンドやファースト、レフトなど、本職のショート以外のポジションを守ってきたが、彼の担当スカウトである後藤光貴は「お前が守るべきポジションはそこじゃないぞ。いずれ戻るべきポジションがあることを忘れるな!」と発破を掛け続けてきたという。当然、本人もその気である。少年野球時代からショート一筋、プライドがあるのだ。
その浅村のライバルの一人として同級生の金子が参入してくる。
昨秋のドラフトで金子の名前が読み上げられた時は疑問に思ったものだったが、そこにこそ、西武の心にくい、チーム強化の戦略があることに気付いた。
中島&片岡、中村&栗山という組み合わせは偶然ではない。
同ポジションや打順を競う同世代の選手を意図的に獲得してきた西武。彼らを切磋琢磨させる一方で、競い合った仲間の力を集結することで生まれる一体感を、その厳しい戦いの中で見せてきた。
近年の例で言うと、中島の傍には同級生の片岡がいた。
彼らが'08年の日本一を支えたのはいうまでもない。その1学年下に中村剛也と栗山巧。この4人が、ここのところの西武の象徴だったのは、ただの偶然ではないのである。
勢いに乗ると止められない――。時に西武はそうした力を発揮してきたが、それを可能としてきたのは、同世代による切磋琢磨と一体感を土台としたチーム編成だった。
浅村のライバル・金子の話をすると、彼も高校時代から関西地区を代表するショートストップとして注目を浴びた1人だった。全国制覇を果たした大阪桐蔭高で1番・ショートだった浅村が高卒プロ入りを果たす一方、立命館宇治の1番・ショートだった金子は京都府大会決勝戦で敗退。立命館宇治の系列の大学、立命館大へ進んだ。