MLB東奔西走BACK NUMBER
出場希望プホルスを主催者が不許可!?
WBCの選手選出における日米の落差。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/02/09 08:01
WBCへの途中参加を表明したとされるエンゼルスのアルバート・プホルス選手。一方、昨シーズン終了後に右ヒザの手術をしており、選手の体調を考慮したMLBと選手会が出場を許可しなかったとの報道もあり、出場に関して注目される。
メジャー側の調整不足を補うための露骨なルール改正!?
大会を目前にして恐縮ではあるが、これまで何度となくWBCの実情を説明してきた通り、今回の第3回大会も実は昨年末の段階ですでに破綻が始まっていたと言っていい。
昨年9月にMLBが大会概要を説明する記者会見を開いた際、主催者であるWBCIのポール・アーチー代表は、3月開催の選手の準備、調整不足の問題について以下のように釈明していた。
「今回は各チームの出場候補選手の発表を12月3日に行うことにした。そうなれば候補に選ばれた選手たちは個々人で準備ができるので、よりいい状態で大会に臨むことができるはずだ」
だが実際は12月3日の発表は延期され(日本だけが律儀にこの日に出場候補選手34名を発表した)、結局は1月16日にまでずれ込んでしまっている。これは結局のところ過去の大会同様に、MLB各チームや選手との調整が上手くいかず、計画通りに候補選手を発表できるような段階ではなかったためだろう。
1月30日になって大会の球数制限が発表されたが、その複雑な事情を裏づけるように、ラウンドごとの球数制限が第2回大会より5球ずつ少なくなっていた。
主催者側の思惑通り、選手たちが個々に準備ができるのであれば、なぜ球数を減らす必要があるのだろうか。これでは、むしろ第1回、第2回大会より逆行してしまっているのではないか。
前述の記者会見ではIBAF(国際野球連盟)会長が「我々にとってWBCがサッカーのワールドカップに匹敵する」と豪語していたが、他競技において選手の調整不足を理由に出場機会を制限するルールが存在する世界一を決める国際大会があるのか教えてほしいものだ。
日本とキューバが予選で対戦するのは米国の深謀遠慮!?
それにも関わらず日本では「今回は米国が本気になっている」という意見が罷り通ってしまうのだから、本当に由々しき事態だ。
その理由として1次ラウンドにキューバを日本と同じプールに送り込んできたからだと主張する人もいる。
確かにこのコラムで何度もWBCについて言及してきた通り、WBCは純粋な国際大会というよりもMLBの私的イベントとしての要素が強い。組み合わせもMLBの意向でなんとでも変更できるし、日本で論じられているように「米国が優勝するために強豪キューバをアジアに回した」という考え方もできなくはない。
だが実情はMLB本意の考えたかとはいえ、もう少し単純だ。