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崩壊目前のマラガがCLの台風の目!?
チームを救ったペジェグリーニの侠気。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2013/02/06 10:31
ペジェグリーニがマラガ監督に就任したのは2010年11月。初年度はリーガ11位と低迷するも、昨季は4位入り。2009-2010シーズンはレアルを率い、その前の2004年から2009年までは「イエロー・サブマリン」として名を馳せたビジャレアルの指揮を執った。
スペインでは毎シーズン終了後、MVPやベストイレブンと並べて「サプライズ」を選ぶ習慣がある。対象となるのはノーマークだったのに意外な活躍をした選手や、予想外に良いサッカーで好結果を残したチームだ。
前半戦を終えたばかりで少々気が早いが、今シーズンのサプライズの有力候補はマラガだろう。「昨季4位で今季もいまのところ4位のチームがなぜサプライズ?」と思う向きもあるかもしれないが、開幕前のドタバタを考えると、現在のその4位が十分に驚異なのだ。
事の起こりは'10年の6月、カタールの王族に属する実業家アル・タニがオーナーとなったこと。少ない予算と冴えない運営手腕のせいで慢性的な財政難を患っていたマラガは、これを機に、ふんだんなカタールマネーを使って、地方の小クラブ脱却を図った。
スポーツディレクターにはスペイン代表のW杯制覇に大きく貢献した国内有数のスカウト、アントニオ・フェルナンデスを据え、贅沢なチーム強化を行なった。同時にカンテラを再構築してラ・アカデミアと名付け、元アスレティックのスター、ユレン・ゲレーロらを迎えて本気の選手育成に乗りだした。地元出身の名士フェルナンド・イエロがスペインサッカー協会のスポーツディレクターを辞めると、GMとして招き入れた。
'11-'12シーズンの終盤までは順風満帆で、クラブ史上初のCL出場権も手に入れた。
チーム崩壊の危機などどこ吹く風、CL決勝Tに首位進出。
ところが、アル・タニの心変わりによりマラガは梯子を外される。
オーナーが急に財布の口を締めたため、選手への給料遅配や移籍金の支払い遅れが発生。それでもオーナーは出費を拒み、クラブ内で帳尻を合わせるよう命令。それが昨季末のこと。
結果、去年の夏には役員の大幅な入れ替えが行なわれ、チームからはプレイメイカーのカソルラが去り、守備の要のマタイセンが去り、チーム最多得点者ロンドンが去り……。
ホアキンもデミチェリスもトゥラランもエリセウも移籍を真剣に検討していた。当然、補強もままならなかった。
マラガは終わりだと多くの人が考えた。イエロもフェルナンデスもいなくなったクラブは信用を失った。
それなのに、蓋を開けたらパフォーマンスに低下なし。ミランと同組になったCLグループリーグは首位で突破を決めた。