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“フランスW杯戦士”平野孝が分析。
日本代表ベスト16、最大の理由とは。
text by
平野孝Takashi Hirano
photograph byFIFA via Getty Images
posted2010/06/27 18:10
喜びと共に驚きの声が挙がる中、この結果を「当たり前」と語るのが元日本代表の平野孝だ。岡田武史監督の下、'98年フランスW杯代表メンバーに選出され、アルゼンチン戦、ジャマイカ戦の2試合に途中出場。'06年には同監督率いる横浜F・マリノスにも在籍した。
岡田武史とW杯を知る男は、この快挙に何を見たのか?
12年前のフランスワールドカップで岡田監督が掲げた「1勝1敗1分」という目標。僕は、今回、日本代表のグループリーグをそう予想していたから、決勝トーナメント進出は当たり前だと思っていた。現在、カナダのバンクーバー・ホワイトキャップスでプレーしているので、日本の状況は詳しくはわからないけど、友人に聞くと「予想してなかった」という人が多くて驚いている。
今回の日本代表からは、3試合をどう戦うか、というグループリーグ全体を見据えた戦い方が感じられた。そういったチームとしての戦略を選手もしっかりと理解している様子が伝わってきた。
まず、初戦。3試合あるからこそ初戦が大事になってくる。そこで決まるといってもいい。だから、どこの国も負けたくないし、慎重な戦い方をしてにらみ合いになることが多い。引き分けが多いのはそのためだ。
ロープで結ばれたようにオーガナイズされた日本代表。
では、日本はどう戦ったのか?
カメルーンの特徴を岡田監督は正確に捉えていた。身体能力、フィジカルでは勝てない。それならどのようにプレスをかけるのか。その点において、みんなが同じ考えを持ってプレーしているように見えた。しっかりとオーガナイズされていた。まるでロープで結ばれているように、誰かが右に行けばみんなで右のほうに流れ、常に選手同士の距離を一定に保ちながらまとまっていた。
とはいえ最後の10分、やはり攻め込まれる時間帯はあった。今までの日本なら、あそこで失点していたかもしれない。きっちりと守りきったのは日本代表の成長の証だろう。4年前のドイツ大会、オーストラリアとやった初戦のように、1-0から3点取られるようなことにならなくてよかった。選手の頭にもあの悪夢はよぎったと思う。
色々批判はあるようだが、カメルーン戦の戦い方は正解だった。初戦は、「実力」云々よりもとにかく泥臭くても結果を残すことが大切。ブラジルだって北朝鮮に実力的には大差で勝てたはずなのに、ああいうこと(2-1で辛勝)が起きる。
一方、カメルーンは、チームがまとまっていなかった。そういうチームは、たとえエトーのようなスーパースターがいたって絶対に勝てない。サッカーというゲームは、ひとりでも意識が低い選手がいたら勝てないのだ。ましてやここはワールドカップ。前回のW杯準優勝のフランスもチーム内のゴタゴタで、グループリーグ最下位で敗退した。
とにかく、初戦で勝ち点3を取るのは非常に難しいし、どれだけ大切か。日本は最高のスタートを切ったと思う。