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大迫勇也と柴崎岳が描く成長曲線。
鹿島が誇る逸材が代表に君臨する日。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byToshiya Kondo
posted2012/12/08 08:01
22歳の大迫(写真左)と20歳の柴崎。2人とも、ほぼ全試合に近い出場でシーズンを通して活躍。2連覇となったナビスコ杯では、昨年は大迫が、今年は柴崎がMVPを獲得した。
選手が急激な成長曲線を描き始めるきっかけとは?
試合後の取材エリアで見る彼はいつも、ストライカーとしての責任感からか、それとも本質的に持ち合わせる個性なのか、自分の殻に閉じこもるストイックなキャラクターを感じさせた。その姿は時にふてぶてしく、または不貞腐れているようにも映り、メンタル面での柔軟性の欠如を感じさせるものでもあった。
数年にわたって1人の選手を見ていると、ある時点を境にその選手が急激な成長曲線を描き始めることがある。しかしそのきっかけとなるのは、多くの場合、技術的な進化ではない。監督やコーチからのアドバイス、妻が何気なくつぶやいたひとこと、何の気なしに生まれた一つのプレー……。そうした小さなきっかけによって精神的な“開き直り”が生まれると、選手はまるで人が変わったように活き活きと躍動し始める。
しかし大迫の場合、自分自身について思い詰めるストイックなキャラクターのあまり、視界が狭まり、開き直って成長するきっかけを逃してしまうのではないかと勝手に懸念していた。もっともそれは、彼のことをよく知らない自分の、取材不足による勘違いだった。
精巧なメカニズムでDFに的を絞らせない大迫のポストプレー。
最終節の柏戦後、大迫は言った。
「監督からはシュートを積極的に打て、もっとゴールを意識しろ、それから代表に入れと言われ続けました。『シュートを打て』と言われ続けたおかげで、吹っ切れた部分はあると思う」
「吹っ切れた」大迫の進化には、まさに目を見張るものがあった。
ポストプレーの巧さは彼の真骨頂だが、そのメカニズムは実に精巧だ。相手が思わず足を出したくなる位置にファーストタッチをコントロールし、出てくる足よりも一足早くボールをつつく。体を寄せられれば体全体に力を込めたブロックで弾き返し、時間を作ってシンプルに味方へとつなぐ。あるいはそう思わせて前を向き、ギアを入れ替えてスピードに乗る。キープかパスか、ドリブルかシュートか、相手の出方を察知してからのリアクションでプレーを選択するから、DFにとっては極めて的を絞りにくい。
半径3メートルのエリアを自在にコントロールするその姿は、まるで冬の全国高校サッカー選手権で“超高校級”の存在感を放ったあの頃のようである。
最終節での柏は「大迫さえ抑えれば」という共通理解を持って試合に臨んだが、最後まで“ゾーン”に入った大迫を制御することができなかった。
“恩師”ジョルジーニョの大迫評は次のとおりだ。
「日本代表で1トップに君臨しているのは前田(遼一)選手であり、彼も非常にポストプレーに長けている。ただ、大迫選手はまだ若く、この意識を持続できれば成長し続け、本当に素晴らしい選手になるのではないかと思う。FWとして必要な要素は、スピード、ドリブル、ヘディングの強さ、ポストプレーの強さ、キープ力が挙げられるが、彼はそれをすべて持っている。また、スペースがなくてもパンチ力と決定力を持ってシュートを打てる。それが魅力だと思う」