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“皇帝”のラストレースは7位……。
シューマッハー、引退までの心を追う。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2012/12/02 08:01

“皇帝”のラストレースは7位……。シューマッハー、引退までの心を追う。<Number Web> photograph by Getty Images

ラストレースとなったブラジルGPのパドックにて。マシンのサイドには「ありがとう、そして、さようならマイケル」とのステッカーが。

来季の方針を明確にしないチームに皇帝は契約を保留。

 復帰後、予選で初めてポールポジションを獲得したモナコGP直後、メルセデスAMGとシューマッハーは来シーズンに向けた契約の交渉をスタートさせた。しかし、話し合いは平行線をたどった。

 シューマッハーには確信が持てなかったのである。「来シーズン、このチームが勝てるマシンを開発できるのか」と。

 シューマッハーは何度もメルセデスAMGに対して、「技術陣が来シーズンどのようなマシンを開発しようとしているのか」を尋ねたが、メルセデスAMGは明確な答えを提示できないまま、シューマッハーに対して契約の更新を迫った。だが、シューマッハーは首を縦に振らなかった。

ハミルトンの移籍がシューマッハーに決断させた!?

 夏休み明けのベルギーGPの木曜日、シューマッハーはチーム代表であり、ベネトンとフェラーリ時代に7度のタイトルをともに手にした戦友であるロス・ブラウンと長時間、モーターホームで話し合いを行った。ちょうどモニターにはFIAの公式記者会見が映し出されていた。出席していたドライバーの中に、のちにメルセデスAMG入りを発表するルイス・ハミルトンがいた。ある記者が、ハミルトンに「来年、ニコ(ロズベルグ)のチームメートになる可能性はありますか」と尋ねると、シューマッハーとブラウンは話し合いをしばし止めて、モニターに視線を送った。ハミルトンは微笑みながら、「その質問には答えることができない」と返答した。

 その直後、F1の興行を取り仕切るバーニー・エクレストンが新しくメルセデスAMGの相談役に就いたニキ・ラウダとハミルトンを呼んで会談を行った。そして、ラウダはメルセデスAMGに対して、ハミルトンとの契約を推す。メルセデスAMGがハミルトンとの契約を発表するのは、それから4週間後の9月28日のことだった。

 3日後、日本へ向かう機中で、シューマッハーの決断を聞いたケームは、発表の場がシューマッハーの思い出の地である鈴鹿となる偶然を運命のように感じていた。

「だって、ミハエルからいつも聞かされていたから。ベストレースは2000年の鈴鹿だって」

【次ページ】 ブラジルGPを終え「最後のレースは最高に楽しかった」。

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