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“皇帝”のラストレースは7位……。
シューマッハー、引退までの心を追う。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2012/12/02 08:01

“皇帝”のラストレースは7位……。シューマッハー、引退までの心を追う。<Number Web> photograph by Getty Images

ラストレースとなったブラジルGPのパドックにて。マシンのサイドには「ありがとう、そして、さようならマイケル」とのステッカーが。

 10月1日、プライベートジェットでジュネーブから中部国際空港へ向かう機内で、ミハエル・シューマッハーは同乗していたマネージャーのサビーネ・ケームに、ある決断を明かす。それは現役からの「引退」である。それを聞いたケームは、静かに頷いた。

 ケームには、わかっていたのである。遅かれ早かれ、今シーズン中にシューマッハーがその決断を下すと。

 復帰して3年目の今年、シューマッハーは過去2年間に比べて、順調な滑り出しでシーズンを開幕していた。開幕戦の予選は4位。2戦目のマレーシアGPと続く中国GPでは復帰後の最高位となる予選3位を獲得し、優勝が狙えるポジションにいた。しかし、開幕戦はギアボックストラブルに見舞われ、2戦目はロマン・グロージャン(ロータス)に追突される。そして、3戦目の中国GPではピットストップ時のタイヤ交換での不手際で、リタイアを余儀なくされた。

奇抜なアイディアと引き替えに4kg増えたマシンの車重。

 不運だけなら、これまで何度も克服してきたシューマッハーは耐えられただろう。問題は、チームメートのニコ・ロズベルグがチーム初優勝を飾った後、マシンの開発の方向性を見失ったことだった。ライバルチームが排気システムを活用してダウンフォースを得る開発に注力を傾けたのに対して、メルセデスAMGはDRS(可変リアウイング)を稼動させたときに空気抵抗を減らしてトップスピードを上げる奇抜なアイディアの開発にのめり込んでいった。

 この開発によってメルセデスAMGは予選でコンマ3秒程度速くなったものの、車重が約4kg増した。DRSは予選までは自由に使用できるが、レース中は特定の区間で前車との差が1秒以内に接近したときにしか利用できない。つまり、メルセデスAMGのマシンはDRSが使用できない状態でも、レースで常に4kg重い状態で走らなければならなかった。予選で速いメルセデスAMGがレースでたびたび失速していた理由はそこにあった。

【次ページ】 来季の方針を明確にしないチームに皇帝は契約を保留。

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