セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
無敗王者ユーベを撃破したインテル。
“国内外アウェー10連勝”の秘密。
text by

弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2012/11/15 10:30

11月3日、ユベントスとのイタリアダービー。長友の活躍もあり勝利したインテルは、首位ユベントスに1ポイント差に迫った。しかし11日のアタランタ戦で敗れ、その差は4ポイントに広がっている。
あるがままの若者言葉で練習を指導する36歳のストラマ。
開幕後間もない2節ローマ戦の惨敗に続き、地方クラブ相手にホームで不甲斐なく敗れ、観衆から容赦ないブーイングを受けると、指揮官は3バック導入に踏み切った。成長著しいフアン・ジェズスとラノッキア、サムエルの3CBが並ぶDFラインは安定し、開幕後の9試合で11失点を喫した守備陣は、その後の9試合での失点を6にまで減らした。
攻撃面では、“リーサル・ウェポン”と呼ばれるパラシオがカウンター攻撃のフィニッシャーとして本領発揮。攻撃の柱ミリートとアシスト役カッサーノと組む“トリデンテ(3トップ)”は、ユーベを撃破した3-4-3の鍵だった。
だが、何より変わったのは、監督と選手たちの関係であり、試合へ臨むメンタルだ。
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「マンマ・ミーア(何てこった)! 今のプレーはすげえよ!」
アッピアーノ・ジェンティーレ練習場には、およそ名門を率いる監督の言葉遣いとは思えない、ストラマの気さくな声が飛ぶ。選手時代の名声がないことやクラブ内の後ろ盾がない36歳のストラマは、あるがままの若者言葉で練習を指導し、選手たちと同じ心持ちで試合に臨む。連勝が続けば、年上のベテランたちも指揮官の手腕を認めざるを得ない。ユーベ戦のハーフタイムに飛ばした檄は、インテリスタたちにとって、カリスマの名将モウリーニョを思い起こさせずにはいられないものだった。
「審判がやったことは忘れよう。いつものことだと泣くだけのやつは出て行ってくれ。引き分けで良し、で済ますものか。この試合は絶対勝つぞ!」
モウリーニョ時代の“鋼鉄のメンタル”が甦った!
39歳の主将サネッティは、ベテラン選手たちの意見に耳を傾ける年下指揮官への信頼を強調し始めた。チームが一体となり、モウリーニョ時代の“鋼鉄のメンタル”が再び甦ったのだ。
「モウリーニョと比較する必要はない。ストラマッチョーニはつねに真剣に練習に取り組んでいるし、言動にも彼の個性がにじみ出ている。インテルは新しいチームになったが、若手もベテランも、全員がそれぞれの役目を重要だと感じている」
連勝はセリエA第12節、11月11日のアタランタ戦で潰えた。
しかし、今季すでにミランとナポリを破った要注意チーム相手に足元をすくわれた敗戦というより、主力選手の疲労と誤審に近いPKも重なった不運な黒星だった。