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グロージャンに「勝たなくてもいい」と。
F1エンジニア小松礼雄の“親心”。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byMamoru Atsuta
posted2012/10/21 08:01
昨季のビタリー・ペトロフ、そして今季のロマン・グロージャン……まだ経験の浅いドライバーの快挙の陰には、必ず小松の活躍があった。ドライバーとの非常に厚い信頼関係は、サーキットでも有名である。
韓国GP7位完走の意義は獲得したポイント以上に重い。
日本GPでウェバーにクラッシュした瞬間、小松は最悪のケースも考えたという。
しかし、幸いペナルティは10秒ストップ・アンド・ゴーにとどまった。そして、小松はグロージャンに韓国GPでも、それまでと同じ課題を出した。それは、「当たらずにフィニッシュすること」だった。
コース上での事故はドライバーの責任であって、レースエンジニアが負うべき過失ではない。表彰台も狙える力があるクルマがあるのなら、レースエンジニアとしては結果を望んでも不思議はない。それでも、小松は自分の評価につながる成績よりも、一緒に戦うドライバーの未来を優先し、ドライバーにリスクを冒させない選択を下した。
韓国GP7位完走。
手にした結果は6ポイント以上に重かったに違いない。