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<五輪ベスト4とプレミア移籍を語る> 吉田麻也 「人生で一番濃い夏が俺を変えた」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/09/20 06:02
時に激しく仲間たちを叱咤し、時におどけて見せる。
新たなキャプテン像を体現した日本守備陣の要は、
若者たちを戦う集団に変え、世界のベスト4に導いた。
その存在感で実現した、憧れのプレミアリーグ移籍。
新生吉田麻也、人生で最も濃密な夏を語る――。
新たなキャプテン像を体現した日本守備陣の要は、
若者たちを戦う集団に変え、世界のベスト4に導いた。
その存在感で実現した、憧れのプレミアリーグ移籍。
新生吉田麻也、人生で最も濃密な夏を語る――。
この何気ない一言が、チームの危機を象徴していた。
ロンドン五輪開幕の約1週間前に行なわれたベラルーシとのテストマッチ後のことだ。オーバーエイジとして初先発した吉田麻也に、関塚隆監督がこう声をかけた。
「こんなチームだけど大丈夫?」
吉田は笑顔でうなずいたものの、とても「大丈夫です」とは口にできなかった。試合は1対0で勝利したが、チームとして組織的な動きをほとんど見せられなかったからだ。
実は吉田は、日本出発前に行なわれたニュージーランド戦をスタンドから観戦したとき、すでに重大な問題点に気がついていた。
吉田はそのときの緊張を思い出すかのように重苦しく言った。
「ニュージーランド戦を見たときに、『DFラインがちょっと低いな』って思ったんです。ボランチの2人、(山口)螢とタカ(扇原貴宏)はガツガツ行けるんだけど、全体が間延びしているから、カバーすべきスペースが広すぎた。FWがプレスをかけたとき、それについてラインを上げるのか、後ろに残るのか、混乱している感じがあったんです」
ロンドン五輪の日本代表の前線には永井謙佑や大津祐樹といったスピードのある選手がそろっており、前線からのプレスが武器になる……はずだった。だが、他の選手がどう動くかの意思統一がないため、逆に守備がバラバラになる原因になっていた。さらに悪いことに、FWにとっては無駄に体力を消耗するだけで、それが決定力の低下を招いた。