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スター流出で寄せ集めの選手ばかり!
暗雲立ち込めるミランに勝機はあるか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2012/09/08 08:02
第2節ボローニャで初先発した新加入のパッツィーニ(左)がハットトリックを達成し、チームに今季初白星をもたらした。このままの勢いで新生ミランは勝ち進むことができるのか。
今夏の移籍市場、ミランのチーム編成は8月末の期限ギリギリまで固まらないままだった。開幕直前にインテルへ電撃移籍したFWカッサーノの言葉は、終わったばかりの夏のドタバタ劇を端的に言い表している。
「美味そうな匂いの煙はたんとあっても、肝心のロースト肉は少なかった、ってことだよ」
古巣ミランのフロントは口約束ばかり(=煙)で、実際の成果(=肉)に乏しかった。EURO本大会中からクラブへ補強を催促したが、願いは聞き入れられず悪童は腹を立てたのだった。
「スクデット争いを望むのなら、イブラヒモビッチとチアゴ・シウバの2人は絶対に放出すべきじゃなかった。彼らを絶対に放出しない、って約束も反故にされた。だから、俺も出て行くことにしたんだ」
昨季終了から4カ月、ミランは完全に別物へと変貌した。
クラブの厳しい財務状況を受けて、イブラとT・シウバの2枚看板を合わせてパリSGへ売却。高年俸のビッグネームたちも軒並みチームを後にし、クラブの金庫は大きく健全化した。ただし、その穴を埋めるべく今夏フロントが獲得を推し進めた新戦力は、MFコンスタン(前ジェノア)やMFモントリーボ(前フィオレンティーナ)ら、国内外のレンタル組や移籍金ゼロの選手ばかりで、クラブのローコスト路線への転換は明らかだった。
財務状況は改善するも「ミランはバラバラに解体された」。
3季目を迎えるアッレグリ監督は「ミランはバラバラに解体された。チームをゼロから作り直す」と気丈に臨んだが、戦力が確定しない以上、適切な戦術テストもままならない。ユースの若手も大量起用せざるをえなかったプレシーズンマッチでは苦戦が続いた。
USAツアーではレアル・マドリー相手に1対5で大敗。
ガッリアーニ副会長は「世界中が注目していた試合で何という恥晒しだ」と指揮官へきついカミナリを落としたが、開幕1週間前の親善試合ベルルスコーニ杯でも2対3と王者ユベントスに力負けすると、ミランのフロントも駆け込み補強を画策し始める。