プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ルーニーを抑えてトップ下を掴め!
プレミア開幕で見せた香川の可能性。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/08/21 12:10
プレミアリーグ開幕戦にトップ下でフル出場した、マンUの香川。チームは0-1の敗戦に終わったが、香川は巧みなポジショニングとパスで味方のシュートチャンスをおぜん立てした。
ファンペルシの加入で気になる、今後の使われ方。
エバートン守備陣の奮闘もあり、得点には至らなかったが、前述のいずれの場面でも、香川が敵に張り付かれていなかった点は特筆に値する。
香川は、リードを奪ったエバートンが、引き気味の4-4-1-1で守備に専念するようになった後も、敵の後方2列間の狭い隙間にポジションを取り、交互にマークに来るフィリップ・ネビルとダロン・ギブソンから巧みに逃れながら、最後まで相手ゴールに迫ろうと努めていた。試合後、「決め手を欠いた」と指揮官に評されたマンUの攻撃にあって、香川の存在は貴重なプラス材料だったはずだ。
味方の攻撃陣が、狭いエリアでも必要最低限のスペースを確保し続けた新プレーメイカーにパスを出す勇気を持っていれば、決定機の数も増えていたと思われる。
そこで気になるのは、今後の使われ方だ。及第点のデビューを飾っても、プレミアの強豪での現実は甘くはない。開幕戦では、その3日前に正式加入したばかりのファンペルシが、大事を取ってベンチスタートとなったが、昨季のプレミア得点王が先発レギュラーとなるのは時間の問題だろう。ファーガソンが、昨季アーセナルでの成功例に倣い、最前線のゴールゲッターとしてファンペルシに大枚をはたいたこともまず間違いない。
ルーニーをサイドに追いやることができるか?
元来は4-4-2システムを好む指揮官は、プレシーズン中、香川をCFの背後に置く4-4-1-1を採用していた。ところが、開幕直前に獲得した新FWと縦のコンビを組む相手は、常識的に考えれば「10番」を背負うルーニーが妥当だ。結果として香川が2列目の中央に回る場合、競争相手には、燻し銀のスコールズに加え、開幕戦では故障者続出の最終ラインで急造CBを務めたマイケル・キャリックという、パス・レンジの広さで香川に勝る2人の先輩がいる。
漫画の世界を現実に変えた香川には、この際、ルーニーを抑えて、トップ下を定位置にするぐらいの気概が求められる。練習グラウンドで、そして、試合のピッチで適性を示し続けられれば、開幕戦で4-4-2にはこだわらない柔軟性を見せた70歳の指揮官が、4-2-3-1を新たな基本システムに据えた上、万能タイプのルーニーを、2列目のサイドで起用しないとも限らない。全ては、香川の継続的なアピール次第。プレシーズン中のプレーメイカーぶりが、天職での開幕戦フルタイム出場デビューを可能にしたように。