ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
北京で泣き顔、ロンドンで笑顔――。
潮田玲子が負けてなお爽やかな理由。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShinji Oyama/JMPA
posted2012/08/02 12:30
マイナー競技だったバドミントンのイメージを変えた功労者として、この8年間の長きにわたり過酷な日々を送ってきた潮田。美人アスリートとしても注目されていたが、その凄まじい練習量とプレーに対する厳しさは、誰にも負けないものであった。
全て手探り状態で大変だったミックスダブルスへの挑戦。
その話が協会から届いた時、潮田はにわかに現役続行の意欲を取り戻したという。不毛と言ってもよいミックスダブルスを日本で広める――その役割を担うことに、心が動いた。
いざ始めてみると、普及していないだけに、練習相手を探すことさえ苦労することになった。
オリンピックの出場権は、世界ランキングに基づく。潮田たちはランキング外からのスタートだったので、海外の大会に片っ端から出場し、ランキングをわずかでも上げていくために転戦し続けた。
何もかもが手探りで、決して楽しいことばかりではなかったはずの過酷な日々だったようだが、別の面から見ると、新たなチャレンジをすることができていること、つまり、過程の充実があったともいえる。
その上でたどり着いたのが、ロンドンなのである。
ロンドンまでの過酷な日々こそが、潮田にとっての至福の時間だった。
誤解を恐れずに言えば、オリンピックは、充実した日々を過ごしてきたご褒美のようなものだったのではないか。だからこそ結果がいかなるものであっても、オリンピックの舞台ですっきりした表情になったのではないだろうか。
「メダルを獲れなかったことは厳しく自分の中で反省する点、受け止めなければいけない現実だとは思っています」
と言う一方で、次のように語ったのはそんな心境を表しているように思えた。
「4年間、いっしょに戦ってこられて、またオリンピックという最高の舞台を味わえたことは素直によかったなと思っています」
北京とは形を変えて出場した2度目のオリンピックを、ある種の達成感とともに終えた潮田は、9月に行われるヨネックスオープンで引退する。
現役最後の試合を、どのような表情で終えるだろうか。