日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ザッケローニも注目の1トップ候補!?
“速いだけじゃない”永井謙佑の武器。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNaoki Ogura/JMPA
posted2012/08/01 10:30
モロッコ戦でゴールを決めた後の永井は、ピッチサイドの看板に駆け上がってガッツポーズ! スペイン戦で世界を驚かせた日本のスピードスターをチェックするため、モロッコ戦ではプレミアリーグから17チームものスカウトが詰めかけた。
永井謙佑の評価がうなぎのぼりだ。
ロンドン五輪グループリーグ第2戦、モロッコとの戦いではスピードばかりでなく、“シュートセンス”でも驚かせた。0-0のまま迎えた後半39分、カウンターに転じて清武弘嗣のロングパスに反応した永井が一瞬のスピードで相手の裏を取ると、前に出てきたGKの動きを見て右足アウトサイドでループシュートを決めたのである。このゴールシーンを目にしたとき、永井の福岡大時代の恩師・乾真寛監督の言葉を思い起こした。
「永井という選手は“空間”をうまく使えるんです。大学のとき、力を目いっぱい使ってシュートを打ったことはあんまり見たことがない。ホワーンと浮かしてみたり、GKを見ながら駆け引きしてシュートを打つんです。幼少時代にブラジルで生活したこともあってストリートサッカーの価値観を体内に入れていて、難しいと思えるシュートを簡単に決めてみたり、指導者がなかなか教えられないものを彼は自然に備えていた」
永井のスピードを警戒すれば、GKは当然ながら前に出てくる。そういうシチュエーションに何度も遭遇してきただけに、GKの上を行くループシュートのイメージは持っていたのだろう。
スペイン戦ノーゴールのFWが、世界に与えたインパクト。
初戦のスペイン戦では決定機を活かせなかったものの、「スピードはあってもシュートはダメ」などという評価は多少なりとも覆せたのではあるまいか。スタンドで観戦したA代表のアルベルト・ザッケローニ監督もしっかりと目に焼きつけたはずである。
言うまでもなくスペイン戦でのパフォーマンスが「ナガイ」の名を世界に広めた形となった。
ノーゴールのストライカーが、英紙『ガーディアン』から「抜け目がなく、素晴らしくいい選手」と絶賛されたほどだから相当なインパクトだったと言える。
カウンターから裏に抜け出すスピードは、優勝候補スペインの最終ラインをひるませた。トップスピードに乗る時間が極端に短いため、スペインは対応に最後まで四苦八苦していた。