スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
サーモンとトラウト。
~MLBで跳躍する20歳の新星~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/07/04 10:30
首位レンジャーズを追撃するエンジェルスの核弾頭マイク・トラウト。ダルビッシュとの対決も楽しみだ。
最初に名前を聞いたときは冗談かと思った。
マイク・トラウト? 少し前まで、エンジェルスにはティム・サーモンという選手がいたではないか。サーモンとトラウト。鮭と鱒。北洋漁業組合じゃあるまいし、ずいぶんと人を食った偶然があるものだ。
ただし、タイプはまったく異なる。
サーモンは太目の長距離打者だった。当たれば飛ぶが、三振も多かった。通算本塁打数は300本弱。ややでっぷりした上体をゆさゆさと揺すって塁間を駆ける姿が記憶に残っている。
一方のトラウトはスピードスターだ。本塁から一塁まで3.9秒というから、右打者としては相当に速い。実際、今季は4月28日にメジャーに上がってきてから53試合で21盗塁を記録している。これは、ア・リーグでトップの数字だ。
ナショナルズの天才児ハーパーと並ぶ、別格扱いのスター候補生。
といっても、トラウトは痩せ型の選手ではない。身長は183センチで、体重も95キロほどある。
いまはまだ20歳だが、あと7~8年もすれば、けっこう肉づきのよい身体つきになる可能性がある。そう、マーク・マグワイアやバリー・ボンズも、デビューのころはほっそりした選手だったのだ。
いきなり脱線してしまった。
あらためてご紹介する。マイク・トラウトは、今季、ア・リーグで最も注目されている新人である。
え、ダルビッシュ有がいるじゃないか、ホワイトソックスの左腕クリス・セイルも、防御率1位の大注目株ではないか、という反論はすぐに聞こえてきそうな気がする。
だが、トラウトは20歳である(8月7日に21歳になる)。これだけ若いと社会現象の扱いを受ける。ナショナルズの天才児ブライス・ハーパー(19歳)と並んで、彼の扱いは特別だ。