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グアルディオラ退任でどう変わる?
バルセロナの強さと今後の方向性。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byMutsu Kawamori
posted2012/05/02 10:31
今季限りで4年間の監督生活にピリオドをうつことを表明したジョゼップ・グアルディオラ監督。国内外の13の主要タイトルを獲得した名将は、燃え尽きたかのようなコメントを残して、表舞台から去ろうとしている。
今季のゴールまでのプロセスには、より進化した跡も!
'08-'09シーズンと今季のCL準決勝チェルシー戦を比較してみよう。
3年前の2試合も展開は基本的に今回と変わらず、バルサがひたすら攻め、チェルシーは我慢強く守った。
チェルシーのシュート数を見るとよくわかる。3年前は2試合で12本を放ち、枠内へ飛んだのは5本。今回は11本を蹴り、枠内へ飛んだのは4本だからほぼ同じだ。
一方で、バルサのシュート数はぐっと増えた。3年前は2試合で24本を放ったが、今回は46本。枠内へ飛んだ本数は3年前の7本に対し11本である(全てスペインメディアのデータ)。
バルサのゴールはカンプノウでの2点しかなかった。これは問題だ。が、そのゴールを生み出すためのプロセスはむしろ進化していた。
実際ポストあるいはバーに弾かれた4本があと数センチ内側に飛んでいたら、今頃ミュンヘンで行なわれるバイエルンとの決勝戦が話題になっていたはずだ。
またこうした進化はグアルディオラの工夫と勇気の結実なのだから、マドリー戦の敗因として若いテージョとチアゴの先発起用や、初めて試した3-2-2-3というフォーメーションを槍玉に挙げるのは間違っている。
辞めるきっかけに過ぎなかった、リーガと欧州CLでの敗北。
なるほど今回のクラシコでグアルディオラの策は機能しなかった。
しかしマドリーの勝利はあくまでマドリーの手柄。90分間ずっと集中してバルサの攻撃を見事に封じ込め、一撃必殺のカウンターを決めた結果である。
チェルシー戦の勝ち抜け失敗ともども、この敗北をバルサのサイクルが悪い時期に入った根拠にするのは乱暴すぎる。
ただし、グアルディオラにとっては“きっかけ”となった。
リーガ4連覇にしくじり、CL連覇の夢が潰えたところで、彼は長らく棚上げにしていた契約延長問題に終止符を打つことにしたのだ。