スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
リーガの覇権をかけた天王山クラシコ。
もし、レアルが勝ちに行くのなら?
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/04/20 10:31
攻撃だけでなく、守備でも献身的な動きを見せるディマリアの起用法が鍵か。
バルサの猛攻を最小限の消耗で凌ぐことが必須条件。
ボールポゼッションでバルサを上回るのが無理だとしても、速攻と遅攻(ボールキープ)を使い分けることで、守勢に回る中でも体力の消耗を最小限に抑えることができれば90分持たせることができる。バルサの攻撃を抑えきれないことを前提に考えれば、それは勝つための必須条件だと言ってもいいだろう。
それができた上で、マドリーにはさらに乗り越えるべきもう1つの課題がある。引いたバルサから点を取ることである。
最近のバルサは、以前のようにボールロスト直後のハイプレスを徹底して対戦相手をゴール前にくぎ付けにするアグレッシブさが影を潜めた反面、ある程度自陣への侵入は許してもしっかり相手の攻撃を受け止められる最終ラインの安定感が際立っている。
アビダルの離脱は大きな痛手だったが、それでもパワーと魂のプジョル、高さとビルドアップのピケ、スピードと機動力のマスチェラーノとそれぞれ違った特徴を持つ3人が並ぶ最終ラインは、どんなタイプのアタッカーにも対応できる穴のない強さがある。
彼らを前にしてはC.ロナウドやディマリアといった世界有数のドリブラーでも単独でチャンスを作り出すのは難しい。実際12月のクラシコでは、1-2と逆転した時点でバルサがシステムを4-4-2に変えて後方の守備を安定させると、その後マドリーはボールを持たされているだけで全く攻め手を見いだせなくなった。
戦術のバリエーション不足はモウリーニョ采配の限界か。
マドリーが遅攻でもチャンスを作り出すためには、個々の突破力だけでなく2人目、3人目が絡む連動した崩しが必要になる。そのためにはコンビネーションプレーを得意とするエジルやカカを攻撃の中心に据えるのが一番なのだが、守備に回る時間が圧倒的に長いバルサ戦で守備意識の低い彼らを中盤で起用することには大きなリスクが付きまとう。
かといってボランチを3枚並べる守備重視の4-3-3ではマイボール時の構成力が低く、速攻以外に攻撃の形が作れなくなってしまう。結局それは、守備重視なら4-3-3、攻撃重視なら4-2-3-1と、2つのフォーメーションを使い分けることでしか攻守のバランスを調整できないモウリーニョの采配の限界なのかもしれない。