青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
マスターズ敗退と青春の終わり――。
石川遼はこれからどこへ向かうのか。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/04/10 10:30
2日目、石川は出だしの1番で林に打ち込み、トリプルボギーをたたくなど、5オーバー。初日の73位から77位に順位を下げ、予選落ちに終わった。
ゴルフだけに没頭していれば良かった時代が、終る。
夢破れて現実を知る。
「20歳でマスターズ優勝」という石川の夢は、これからは「20歳で」という部分を省いたものに変わっていくのだろう。
少年時代の夢を叶える、追い続けるというのは、一握りの人間にだけ許される贅沢である。多くの人はもっと早い段階で現実と向き合い、折り合いをつけながら、別の夢を見つけて大人になっていく。
石川もそういう段階にやってきたのだ。寝ても覚めても白球を追い続ける高校球児のように、ゴルフだけに没頭していればいい時代はそろそろおしまいだ。
成長するに従い、ますます一般社会から離れていった石川。
年齢以上に大人びた青年として広く社会を知りながらも、これまでの石川はむしろ社会との関わりを断つようにゴルフに没頭してきた。
遠征中は外食はほとんどしない。海外の選手とは練習ラウンドをともにすることもほとんどなく、一緒に食事に行くような機会は皆無。海外遠征ではわざわざシェフが帯同して宿舎には温かな日本食が用意されており、コースでも万全すぎるサポートゆえに選手ロッカーを使う必要もなく、選手ラウンジでくつろぐことさえしてこなかった。
日々のメディア対応をしっかりとこなすため、そこで割かれる時間を取り戻すために一分一秒でも節約したい事情は分かる。練習日から多くのメディアがついて回るために、他の選手をラウンドに誘おうにも気兼ねしてしまう部分もあっただろう。
それらの事情を踏まえた上でも、周囲の人間に頼る部分が多く、至れり尽くせりで“王子然”としていることには疑問を覚える部分がなかったわけではない。
米ツアーに取材に出かければ、少し前なら会場近くのステーキハウスやピザチェーン店でロリー・マキロイやリッキー・ファウラーの姿だって普通に見かけることができた。今回のマスターズではアマチュアの松山英樹が「ボンカレー」と「サトウのごはん」で予選を突破した。清貧のススメをするつもりはさらさらないが、石川のゴルフから溌剌さとたくましさが消えていっている理由は案外そんなところにあるのかもしれない。