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マッサを捨て駒にしてでも優勝を獲る!
フェラーリというチームの恐ろしさ。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2012/04/03 10:30

マッサを捨て駒にしてでも優勝を獲る!フェラーリというチームの恐ろしさ。<Number Web> photograph by Getty Images

マシンで劣るとされているフェラーリにあってアロンソは、開幕の豪州GPで5位、マレーシアGPで優勝と破格の活躍。それに対してチームメイトのマッサは、開幕戦から、リタイア、15位という散々な成績。

 2位を獲得したにもかかわらず、マレーシアGP決勝レース後のザウバーのガレージ裏は、少しばかり殺気立っていた。

 理由は2つある。

 ひとつは、赤旗によってレースが約1時間中断したために、帰りの飛行機の出発時間が迫っていたことだった。本来であれば、BMW時代を除けば、チーム史上最高位となる2位を獲得したセルジオ・ペレスを囲んでチーム全員で記念撮影でも行うところなのだが、表彰式の後もペレスは多くの記者会見をこなさなければならず、なかなか合流できない。約45分後にようやく帰って来たときには、チーム代表のペーター・ザウバーら首脳陣はすでにサーキットを後にしていた。

 そのため、記念撮影はペレスの担当スタッフら、数人が集まって、2位を意味する「P2」の文字盤をはめこんだサインボードとともにこぢんまりと行われたほどだった。

 もうひとつの理由は、レース終盤にザウバーがペレスに伝えた無線を巡って、メディアがその真意を確かめようと、ザウバーのガレージ裏に詰めかけていたからだった。

「フェラーリとの密談なんて、100%ないよ」

 問題となった無線は、2番手を走るペレスがトップのフェルナンド・アロンソに対してコンマ5秒に迫った残り7周となったところでかわされた。

「いいか、チェコ(ペレスの愛称)。我々にはこのポジションが必要なんだ。慎重に行ってくれ」

 トップを射程圏内にとらえながら発せられた2番手キープの指示。不戦敗とも取れる内容は、やがてフェラーリエンジン・ユーザー同士のチームオーダーではないかという疑念を生むのである。

 そのため、ガレージの裏に集まったメディアはザウバー代表が現れるなり、取り囲んで質問を浴びせた。しかし、ザウバー代表はそれは誤解だと弁明した。

「私たちのようなチームには、2位でフィニッシュしたときに得られる18点というのは、とても大きな意味を持つ。もちろん、優勝はしたい。でも、優勝を狙ってミスして、すべてが台無しになってはならない。そのことを無線で確認したんだ。フェラーリとの密談なんて、100%ないよ」

【次ページ】 そこにあったのは「圧力」ではなく、「執念」だった!?

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