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多数報じられる松坂大輔との比較論。
米メディアのダルビッシュの評価は? 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2012/03/14 10:31

多数報じられる松坂大輔との比較論。米メディアのダルビッシュの評価は?<Number Web> photograph by Getty Images

ダルビッシュ有投手は、3月7日、アリゾナ州ピオリアで行なわれたパドレス戦でメジャーオープン戦に初登板した。2回打者8人に対して36球を投げ、2塁打を2本打たれたものの、3三振を奪うなど無失点に抑えた。

登板をこなしがら仕上げていくメジャー流の調整法。

 だが先のローゼンタール氏も論述するように、メジャー1年目の選手、しかもオープン戦の時期の序盤でダルビッシュの全てを評価するのは不可能だ。その辺りについてはレンジャーズの首脳陣も十分に理解している。登板3日後にロン・ワシントン監督は地元メディアに対し、ダルビッシュについてこう説明している。

「結果はまったく重要ではない。まだアーム・ストレングス(直訳すれば“腕の強さ”だが日本流に言えば“肩”でいいだろう)は完全ではないし、制球力も本来のものではない。あと数試合投げてみないと彼の投球がどんなものかは理解できないだろう」

 初登板でダルビッシュが投げた球種が何種類あるかが話題になっていたが、確かに彼は多彩な変化球を操ることができる。だが、どんな投手でもキャンプ中に全球種のレベルを同じペースで上げていくのは無理だし、当然ながらオープン戦初登板から全球種を実戦レベルにするのも不可能だ。

黒田博樹が明かす、オープン戦での肩の仕上げ方。

 つい先日、今年ヤンキースに移籍した黒田博樹投手が、オープン戦に対してどう臨んでいるのかを説明してくれた。

「自分の場合、試合で実際に投げてみて、その日の状態に応じて投球を組み立てていくタイプですから。まだそれぞれのボールに対し納得できていない状態のオープン戦で、いきなり結果を求められてもね……。本当に自分の投球が出来上がってきているのかどうかが分かるのは、オープン戦最後の1、2試合でしょうかね」

 多くの選手、関係者に対し取材してみたところ、ダルビッシュの球種はすべてが超一級品で、打者を打ち取る投球パターンも多種多様とのことだった。それほどレベルの高い選手ならば、黒田の場合と同様、ダルビッシュ本来の投球を見極めるにはもう少し後の方が良いだろう。

必要な準備をしているからこその“強気な発言”。

 実はレンジャーズ入団以来、ダルビッシュの言動で印象に残っている言葉がいくつかある。

「直球はみんなが思っているほど速くないが、変化球は種類も多いし、いい球が投げられる」(レンジャーズでの入団会見)

「すごく細くてパワーもなかったが、トレーニングと食事でキツイ思いをしてこの場にいる。努力した分、他の選手と体格も変わらないぐらいまで来ているし、身体の面では負けていない。何となくやれそうな気がする」(キャンプ初日会見)

「もう一回体重を増やしてシーズンに臨もうと思ったが、重かったので戻した。昨年と同じぐらいの体重だが、パワーは違うし、昨年より良い球は投げられると思う」(キャンプ初日会見)

 日本では“強気発言”などと揶揄する報道もあったようだが、ダルビッシュは自分自身を客観的かつ冷静に見ることができているんだな、と個人的には感じた。メジャー移籍は自分の本意ではないのかもしれないが……彼が理想の投球を目指す上で、必然的な流れでメジャー挑戦することになり、その準備も怠らずにしてきたということが、これだけの強気発言につながったのだと思っている。

【次ページ】 誤解の大元は未体験のメジャー打者の鋭い打球にあり。

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