MLB東奔西走BACK NUMBER
多数報じられる松坂大輔との比較論。
米メディアのダルビッシュの評価は?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2012/03/14 10:31
ダルビッシュ有投手は、3月7日、アリゾナ州ピオリアで行なわれたパドレス戦でメジャーオープン戦に初登板した。2回打者8人に対して36球を投げ、2塁打を2本打たれたものの、3三振を奪うなど無失点に抑えた。
3月7日、注目のレンジャーズ・ダルビッシュ有投手が、オープン戦でのメジャー初登板を果たした(この記事が出る頃が2度目の登板のはず)。結果は、今さらここで報告する必要もないほど、“鮮烈デビュー”、“衝撃デビュー”などの見出しとなって日本で大々的に報じられた。
このオフに、日米両国で最も関心を集めた選手だけに、その初登板が注目されたのは当然だろう。だが映像を観てもわかるように、観客席にはかなり空席が目立っていた。しかも各メディアから配信された、プラカードを持って応援に駆けつけた熱狂的なファンの写真をチェックしてみると、日本人の姿ばかりだった。
松坂大輔投手がメジャー・デビューを果たした2007年のキャンプでは、彼が登板する度に球場は満員に膨れあがり、日本人ファンよりむしろ地元ファンの人たちが、プラカードや応援グッズを用意して応援していた。その当時と比較してしまうと、ちょっと物足りなさを覚えてしまう。ただ、全国区の人気を誇るレッドソックスに対し、あくまで地方球団の存在であるレンジャーズという所属チームの違いも大きく影響しているのは間違いないだろう。
とはいえ、米国内でダルビッシュへの関心が薄かったということではない。主要メディアはすべて現場に記者を派遣していたし、MLB公式サイトとレンジャーズの公式サイトでは、ダルビッシュの投球を生中継でストリーミング配信する熱の入れようだった。そしてこちらのメディアの反応も一様にダルビッシュの投球を評価するもので、そういった意味でもダルビッシュのデビューはまずまずだったといえる。
米メディアで多く見られた、松坂とダルビッシュの比較論。
アメリカでの報道で気になったのは、同じように高額入札金を投資してメジャー入りした松坂との比較論だ。
松坂に関してはその投資に見合った活躍をしていないという評価が一般的になりつつあるが、一方、ダルビッシュに対しては大いに期待を寄せる論調になっている。
例えば、FOXスポーツのケン・ローゼンタール記者は「彼は第2のダイスケ・マツザカにはならないだろう」と評していた。全36球中26球ストライクを投げ、さらに頭上に飛んできた難しいボールを難なくさばき、走者をホームで刺したプレーなどから以下のように論じている。
「ダルビッシュはマツザカ以上に積極的な投球をし、身体能力の高さを披露し、さらにチームメイトともかなり打ち解けているようだ。彼がマツザカ以上の活躍をする保証はないが、ここまでの様子では申し分ないと言っていい。
1年目ということで、メディアは特に多くのことを勘ぐりすぎなのだろう。だが私自身は、マツザカ以上にダルビッシュを観察することが楽しいと感じ始めている」
またCBSスポーツのスコット・ミラー記者は、松坂だけでなく、さらにこのオフにエンゼルスへとFA移籍したC・J・ウィルソン投手も引き合いに出しながら、ダルビッシュの積極的な投球を評価している。
「彼はマツザカのようにノロノロ(どんどんストライクを投げていかない)していないし、ウィルソンのようにジワジワ(球数を使いながらじっくりと攻める)といかない。とにかく彼はバッターと正面から対峙しており、それが可能なだけの投球術を有している」