なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
なでしこ達が得たもの、失ったもの。
五輪の課題見えたアルガルベ杯総括。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byAtsushi Tomura/AFLO SPORT
posted2012/03/08 11:45
後半ロスタイム。オコイノダムバビがこの試合ハットトリックとなるゴールを決めた瞬間。澤穂希という戦術面でも精神的な面でも中心となる選手を欠く中、なでしこ達は持ち前の勝負強さを存分に発揮したのだが……。
Number Webでのアルガルベカップ開幕直前の展望コラムに、「日本にとって勝敗に一喜一憂するような大会ではない」と書いたのは、10日ほど前だった。その見解は大会が終わったばかりの今、パソコンのキーを叩いているポルトガルの地でも、変わることはない。
ただし、残された結果の奥に潜んでいる意味については、精査されてしかるべきだ。なでしこジャパンにとってアルガルベカップで得られたものとは何だったのか、それを検証したい。
まず、オフ明けで初めて迎えた国際試合であるノルウェー戦と、日本と比べて選手個々の力量が明らかに劣ったデンマークとの第2戦についてだが、これは肩慣らしのためのスパーリングマッチと見なし、評価対象から外すのが妥当なところだろう。
アルガルベカップにおいて、なでしこサッカーの現在地を測るベンチマークと成り得た試合。それはやはり、世界ランク1位であるアメリカとのグループリーグ最終戦と、同2位のドイツとの優勝決定戦に尽きる。
どうしてなでしこジャパンはアメリカに勝てたのか?
アメリカは、昨秋の国内リーグ終了以降も積極的に代表合宿や国際試合をこなし、1月末にはロンドン五輪北中米カリブ海予選を戦っている。つまり彼女たちはすでに、トップフォームの状態にあった。そんなチームを相手に日本はほぼ試合を支配し、勝利したのである。キャプテンの宮間あや(岡山湯郷)は、
「アメリカのこの大会での試合は事前にDVDでチェックしたんですが、日本戦での彼女たちはその映像ほど動けてなかったですね」
と振り返ったがその理由は、グループリーグの1、2試合目でアメリカが同じ主力選手を使い続けてきたせいばかりではない。試合後に敵将のピア・スンダーゲが明らかにしたように、
「選手たちが、日本のボールポゼッション能力に対してナーバスになっていた」
のである。