なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
なでしこ達が得たもの、失ったもの。
五輪の課題見えたアルガルベ杯総括。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byAtsushi Tomura/AFLO SPORT
posted2012/03/08 11:45
後半ロスタイム。オコイノダムバビがこの試合ハットトリックとなるゴールを決めた瞬間。澤穂希という戦術面でも精神的な面でも中心となる選手を欠く中、なでしこ達は持ち前の勝負強さを存分に発揮したのだが……。
「パスを回されると取れない」という苦手意識。
開始早々こそアメリカ選手は積極的に日本のボールを追い回したが、いくら走ってもさらりとかわされてしまう現実を突きつけられると、早々にチェイスを諦めてしまった。
一方、アメリカ選手がボールを持つと日本は即座に連動したプレスをかけ、楽々と奪い取った。
まだまだ体が動かず試合感覚が戻っていない今の時期でも、昨年のW杯時よりさらに精度を高めた日本のポゼッションと組織的守備が持ち味を存分に発揮して、昨年の同大会優勝国を封じ込めた。
『なでしこ』という愛称が女子代表につけられる前の時代も含め、公式戦、親善試合を問わず、日本があそこまでアメリカを圧倒できた試合は、過去なかったのではないか。アメリカの選手には、「なでしこにパスを回されると取れない」「日本戦ではすぐにボールを奪われてしまう」という先入観や苦手意識が植え付けられたことだろう。これは次回以降の対戦に、ボディーブローのように効いてくる。
佐々木監督も予想していた、序盤におけるドイツの猛攻。
ところがドイツとの優勝決定戦では、形勢がまったく逆転した。
キックオフ直後から敵の猛攻を受け、20分、22分と瞬く間に2失点。実はこの試合前、佐々木監督は
「お互い4-4-2の陣形だから、がっちりマッチアップしてボールの流れが悪くなりがち。ボランチは機を見てディフェンスラインに下がるなどして、パス回しを工夫するように」
と指示を出していた。
だがこの指示に宮間、阪口夢穂(日テレ)の両ボランチが忠実になりすぎ、DFラインだけでボールを回せる状況でもボランチが下がってきて、自陣ゴール前に多くの選手が残る状況を招いてしまった。
それでドイツはプレッシャーをかけ易くなり、主導権を握ることができたのだ。