青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
世界中のゴルフ界を韓国勢が席巻!?
石川遼と彼らにおける、危機感の差。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byGetty Images
posted2012/03/01 10:30
アクセンチュア世界マッチプレー選手権に日本選手でただ一人出場した石川。1回戦では前週のノーザントラスト・オープンを制したビル・ハース(写真)に逆転勝利するも、2回戦でポール・ローリーに1ダウンで惜敗した
【問題】 日本ツアーで年間3勝を上げて大差の賞金王になったベ・サンムン(裵相文)と、1勝も上げられずに辛くも3位となった石川遼。両者の力の差が約2倍であることを具体的な例を挙げて証明せよ。
ゴルフ大学の入学試験があったとして、こんな厄介な問題が出されたとしたら、それはふたりの今季米ツアーでの戦いぶりを比較すればいい。
今季から米ツアーに戦いの場を移したベ・サンムンは、開幕2戦目のソニーオープンから4試合に出て最高位は14位だった。ただし予選落ちはなく、特筆すべきは出場したほとんどの大会で一度はトップ10に顔をのぞかせていることである。初日3位であったり、最終日を8位や4位で迎えたりと常に光るものをスコアで証明してきた。
同じくソニーオープンから推薦で3試合に出場した石川は、最高位こそ13位とベ・サンムンを上回っていたが、各日終了後の順位でトップ10に一度も入れなかった。
2回戦敗退の石川と8強進出のベ・サンムン。両者の賞金は?
そんな2人の差が如実に表れたのが2月26日まで米アリゾナ州で行われていた世界ゴルフ選手権アクセンチュアマッチプレーである。1回戦で強豪ビル・ハースを破る番狂わせを演じた石川は、勢いを生かせずに2回戦で早々と敗退。一方のベ・サンムンはツアールーキーながら8強まで進出して「Biggest Surprise」と騒がれた。大きなインパクトを残したのは残念ながら石川ではなくベ・サンムンの方だった。
上記の問題に解答するならこうなる。
今季2人が稼ぎ出した賞金は、アクセンチュアマッチプレー終了時でベ・サンムンが44万816ドルに対し、石川は20万4470ドル。つまり賞金額で比べれば両者の力の差は2.15倍である。
兵役免除に家族揃って海外移住……韓国勢の強さの源泉。
すでに女子では世界を席巻している韓国勢だが、ベ・サンムンのように男子でも躍進していきそうな雰囲気がぷんぷん漂っている。
韓国勢の強さの理由としていつも挙げられるのがナショナルチームの存在である。男女各6人のトップチームに選抜されれば練習費用などさまざまなバックアップを受けられるし、その下には各30人の常備軍が控えてトップチーム入りを狙っている。
まるでどこぞのアイドルグループのような仕組みだが、それが彼らに常に刺激を与えているのは間違いない。
家族の全面的なバックアップもある。国内以上に練習環境が整っていると思えば、家族そろって米国やオーストラリアなどに移住することもいとわない。バックアップというには重すぎるが、それゆえに子供は全てを背負って妥協なくゴルフに突き進む。
男子選手には国際大会でのタイトルが兵役免除につながるという『特典』も用意されている。