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世界中のゴルフ界を韓国勢が席巻!?
石川遼と彼らにおける、危機感の差。 

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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posted2012/03/01 10:30

世界中のゴルフ界を韓国勢が席巻!?石川遼と彼らにおける、危機感の差。<Number Web> photograph by Getty Images

アクセンチュア世界マッチプレー選手権に日本選手でただ一人出場した石川。1回戦では前週のノーザントラスト・オープンを制したビル・ハース(写真)に逆転勝利するも、2回戦でポール・ローリーに1ダウンで惜敗した

頂点を目指す貪欲さがより過酷な競争へと駆り立てる。

 日本ゴルフツアー機構の小泉直会長は、昨年末の3ツアーズ選手権で2年連続賞金女王のアン・ソンジュとプロアマを回った時に「どうしてそんなに強いの?」とストレートにたずねたという。

「ちょっとでも気持ちを緩めたら簡単に脱落していく。ピリピリとした中にいつも自分を置いておかないといけないんです」

 圧倒的な強さで女王になったように見えるアン・ソンジュでも、競争意識は骨の髄まで染みている。昨年8月に日本ツアーで初優勝した時のベ・サンムンの言葉にもそれは垣間見えた。

「今年は韓国の選手が自分より先に日本ツアーで初優勝していた。僕は韓国の賞金王だし、プレッシャーは感じていた。でも、そのプレッシャーがあったからこそ勝てた」

 そうした重たいほどの危機感や覚悟があるからこそ、彼らのフットワークは逆に軽くなる。

 ベ・サンムンは韓国で2年連続賞金王を獲得し、参戦2年目で日本でも頂点に上りつめて早々と米ツアーに旅立った。他にも石川と同い年のノ・スンヨルはアジアンツアー賞金王を経て、欧州ツアーでも活躍し、今年は予選会を経て米ツアーに挑戦している。

国内の成功で満足する日本人選手は韓国勢に抜かれる!?

 ダニー・リーは8歳でニュージーランドに移住し、2009年のマスターズでロリー・マキロイ、石川遼とともに10代トリオとして注目を集めた選手である。'10年のファイナルQT(最終予選会)に失敗して、表舞台で名前を聞く機会はめっきり少なくなっていた。しかし、昨年は米下部ツアーで賞金ランク6位となり、今季レギュラーツアーの出場権を獲得。着実に力をつけて這い上がってきた。

 彼らは居心地のいい場所に安住せず、次々と新たなことを吸収し、環境適応能力も磨かれていく。

 ベ・サンムンの前に韓国の賞金王となり、日本でも一足先に賞金王に輝いた金庚泰(キム・キョンテ)は言う。

「昔は日本の選手の方が絶対に上だった。僕が'07年に初めて日本ツアーに出た時も、周りの選手みんなすごく強く感じた。コースに慣れるのにも時間がかかった。今は韓国の選手が日本、アジア、アメリカでもいっぱいプレーしてる。日本の選手は日本がいい、日本だけで大丈夫だと思ってしまうけど、韓国の選手は世界で自分が一番成長できるツアーに行こうと思える」

【次ページ】 引き離されつつある実力差を石川はどう縮めていくか。

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