オリンピックへの道BACK NUMBER
あの元気な上村愛子が帰ってきた!
ワールドカップ2位までの道のり。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKYODO
posted2012/02/26 08:01
フリースタイルスキーのW杯モーグル苗場大会で上村愛子(左)が2位となり、2010年3月の猪苗代大会の優勝以来31度目の表彰台を飾った
「びっくりしました」
当の本人が驚くのも無理はない。
2月18、19日、新潟県苗場スキー場で行なわれたフリースタイルスキー・モーグルのワールドカップ。初日、モーグルで7位、2日目のデュアルモーグルでは2位と、国内での復帰戦を飾った上村愛子の滑りは、本人はむろん、周囲の人々をも驚かせるものだった。
上村は、4度目のオリンピック出場となったバンクーバー五輪で4位となったあとの2010年6月、「15年間休まず走り続けてきましたが、一度立ち止まり、純粋にスキーを楽しむ1年をゆっくり過ごしながら、今後の競技活動について考えていきたい」とコメントし、休養を発表した。
そのまま競技生活を続行するにはためらいがあったからだ。
次のオリンピックまでの4年は長い。その間、厳しいトレーニングを続け、大会に出場して順位を争うのは、生半可なエネルギーでは済まされない。
また、上村はオリンピックの前のシーズンの2009年の世界選手権で初優勝している。このとき、世界一になったことと共にうれしかったのは、長年、理想としてきた滑りをほぼ実現したことだったという。すでに達成感も得ていたことも、バンクーバー五輪後に選手として活動を続けていくのをちゅうちょした要因のひとつであった。
「引退する理由が、私の中では見つかりませんでした」
休養に入った上村が、競技への復帰を発表したのは、2011年4月のことだった。
「本当にリフレッシュできた、有意義な1年間でした」
休養期間を振り返った上村は、競技への復帰を決めた理由をこのように語った。
「休養中は引退する理由をずっと探して過ごしていましたが、私の中では見つかりませんでした」
さらに、復帰にあたっての抱負をこのように口にした。
「ゼロからのスタートになりますが、しっかりと練習を再開し、前向きに頑張っていきたいと思っています」
昨年12月、復帰の場となった北米での大会で2戦続けて2位になると、年明けにワールドカップ遠征メンバー入り。
1月からのワールドカップ4戦を、27位、7位、11位、21位という結果で終えて迎えた苗場大会。初日となった18日、上村は予選を6位で通過し、決勝では7位の成績を残す。翌日、予選通過16名による対戦形式で行なわれるデュアルモーグルでも勝ちあがり、2位となったのだ。