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<私とカラダづくり> 内田樹 「カラダというアナログを大切に」 

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photograph byMami Yamada

posted2012/01/19 06:00

<私とカラダづくり> 内田樹 「カラダというアナログを大切に」<Number Web> photograph by Mami Yamada
理想のカラダは人それぞれ。みんな何かを変えたいと思ってる。
そこで雑誌Number Do「理想のカラダのつくりかた。」では、
100人のトレーニングに迫りました。

ウェブでは今回、“物書き兼業武道家”内田樹先生が語る
カラダづくりを特別公開します。

 哲学、教育、映画に文学、そして身体論。幅広いジャンルについて、そのしなやかな知性で縦横無尽に論じている内田樹先生。'11年春に長年勤めた神戸女学院大学を退官した思想家は、合気道の師範でもあり、11月には念願の自宅兼道場「凱風館」を建てた。

 誰もがつい「先生」と呼びたくなってしまうウチダ先生が、合気道との出会い、人間にとってカラダとは何なのか、そして現代日本の病巣まで、合気道精神たっぷりに語ります。

現代日本を代表する武道家の道場に入門するまで。

 小さいころから、カラダを動かすことというよりも、武道が好きだったんです。

 兄が剣道をやりだし、「僕もやりたい」と始めました。町道場に通い始めてしばらくしたら、熱心に稽古するのを見て、ひとつ年上の先輩が袴と道着を「使っていいよ」って貸してくれたんです。色落ちして、つぎはぎだらけだったけど、着たときの感動は忘れられません。剣道をやりたかったというより、袴を穿きたかったのかもしれませんね(笑)。

 その後、中学2年まで剣道、予備校と大学時代は空手。大学卒業後も色々と武道の道場を探し歩きましたが、どれも長続きしなかった。'75年ごろ自由が丘に住んでいて、駅の近くを歩いていたときに、古い柔道場で道着を着て稽古をしている人たちを見つけたんです。覗いていたら、「どうぞ中で見学して下さい」と声をかけられ、そのまま入門してしまいました。下宿から歩いて5分くらいのところで、そこが多田宏先生という、現代日本を代表する武道家の道場だった。もちろん入門当時は多田先生のことなんか知りませんでした。ただ、それまで習ったどんな先生とも、立っている場所もめざしているものもまったく違うということだけはわかりました。

合気道の利点は、自分自身の潜在能力の開発に集中できること。

 合気道を36年間続けられたのは僕の気質にあっていたからですね。ほかの武道はほとんどすべて競技化している中で、合気道だけが試合形式を採用していない。相対的な強弱勝敗を論じないで、自分自身の潜在能力の開発ということだけに集中できる。これが大きな利点だと思います。

 強弱勝敗が大きなウエイトをしめるスポーツでは、時間的に設定された「目標」がある。アマチュアでも、市大会、県大会、全国大会があって、その先にはオリンピックや世界選手権があるというかたちで競技日程が予示されています。「何月何日の試合でよい成績を残す」という条件が示されている。ということは、「ここまで頑張ればいい」というリミットが設けられているということです。

【次ページ】 多くの人々がのめりこむ競技スポーツの難点とは?

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