濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“格闘ネイティブ”たちがこじあけた、
日本格闘技界における新時代への扉。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2012/01/15 08:01
Krush55kg級王者の瀧谷渉太(写真右)はKrush.15、後楽園ホール大会で、元全日本キックバンタム級王座にして、ベテランの寺戸伸近と対戦。世界レベルの寺戸に対し、1R1分11秒KOという見事な勝利で初防衛に成功した
2012年の日本格闘技界は“格闘ネイティブ”たちの激闘で幕を開けた。
格闘ネイティブとは、現在二十歳前後の選手たち。デジタルネイティブが幼い頃からパソコンに慣れ親しんでいるように、テレビでK-1やPRIDEを見て育った世代だ。彼らはプロ格闘家になることを具体的な目標としてジュニア時代から活躍してきた。
その代表格であるKrush・55kg級王者の瀧谷渉太は、「僕らの世代が結果を残せているのは、子どもの頃から格闘技をやってるからだと思います。若いけどキャリアは長いんです」と言う。野球やサッカー、ゴルフなどと同じく、格闘技でも少年時代から鍛え上げられた選手がメインストリームになりつつあるのだ。
1月8日、9日の後楽園ホールでは、格闘ネイティブである堀口恭司、卜部弘嵩、瀧谷が相次いで興行の“主役”となった。
堀口は1990年生まれの21歳、卜部と瀧谷はともに22歳。相手はいずれも30代、これまで一時代を築いてきた選手たちだ。
堀口たちがひとかたまりの“才能世代”を形成しているだけに、試合は単なる“新旧対決”にはとどまらない意味を持つことになった。
青木真也に「世界一になる素材」といわしめた“才能”。
1月8日、総合格闘技・修斗では、堀口が元世界王者にしてアメリカ進出を控えた上田将勝と大接戦を演じた。
6戦全勝5KOのレコードを引っ提げてトップファイターに挑んだ堀口は、その格闘センスを存分に見せつけた。距離を絶妙にコントロールし、遠い間合いからパンチとローキック。最終3ラウンドには、あわやKOかというダウンも奪った。
グラウンドでディフェンスに要する時間が長かったため2-0の判定で敗れた堀口だが、むしろ今後の可能性を感じさせたと言っていい。レスリングや寝技の攻防で上田と渡り合ったことで、彼はただの“殴り屋”ではないことを証明したのである。試合を見た青木真也は、堀口を「世界一になる素材だと思った」と絶賛している。