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なぜレンジャーズが獲得したのか?
ダルビッシュを巡る選手補強の裏側。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byNaoya Sanuki

posted2011/12/22 11:00

なぜレンジャーズが獲得したのか?ダルビッシュを巡る選手補強の裏側。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

日本が連覇を果たした2009年の第2回WBC。アメリカと対戦した準決勝では、ドジャースタジアムにダルビッシュの勝利の咆哮が響きわたった。アメリカの野球ファンの目にも、くっきり焼き付けられたはずのシーン

“常勝軍団”を築き上げるために必要な本格右腕。

 2年連続リーグ優勝したレンジャーズを、“常勝軍団”に育て上げようとしているのは明白だ。その意味でも大金を投資して、25歳のダルビッシュを獲得する意味があったといえる。

 というのも、このオフ、今シーズン16勝をマークしたエース左腕、C・J・ウィルソン投手がFAでエンゼルスに移籍している。レンジャーズはシーズン中からウィルソンの引き留めにあまり熱心ではなかったように思う。今季は取材機会も多く頻繁に現地報道に触れてきたが、むしろウィルソンの移籍を既定路線と考えていた節がある。

 そこで今シーズンの先発陣をみてみよう。

 エース的存在だったウィルソンを筆頭に、左腕のデレク・ホランド、マット・ハリソンの2投手。さらに右腕のコルビー・ルイスとアレクシ・オガンドの各投手が続く。

 左腕はホランド・25歳、ハリソン・26歳と若手が揃っている。しかも、ホランドは常時球速150キロ以上を計測する本格派投手で、今後はウィルソン以上の成績を期待できる有望選手だ。

 その一方で、右腕先発投手には多少の不安材料がある。32歳のルイスはシーズンを通して安定した投球をみせたが、技巧派投手でありエースとしてローテーションを牽引するには物足りない。さらに28歳のオガンドは今シーズン中継ぎから先発に転向したばかりで間違いなく経験不足。シーズン前半戦はオールスターに選出されるなど活躍をみせたが、後半戦は明らかに疲労が現われローテーションを守れなかった。来シーズンに向けて不安材料が残る。

日本人選手の実力を色目無しに評価するレンジャーズ。

 それだけに実績もあり、将来にわたってエース格として活躍できる本格派右腕投手が欲しかった、というのがレンジャーズのチーム事情なのだ。もちろんメジャーでの実績は未知数であるとはいえ、ダルビッシュに匹敵する潜在能力を秘めた投手は、そう簡単に見つからないというのが実情だろう。

 ところでレンジャーズにはすでに上原浩治投手、建山義紀投手が在籍している。ダラス地区の日本人コミュニティの規模を考えれば、“日本人”選手を保有することの意味は、ニューヨークやボストンなどの東海岸、ロサンゼルスなどの西海岸ほどはないとは思う。それ以上にフロント、スカウト陣が色目無しに日本人投手を戦力として評価、分析している結果の現われと見ていいだろう。

 ちなみにレンジャーズは日本でのスカウティング活動に熱心だった球団の1つだ。オリックスでコーチ経験があるほか、ドジャースでも投手コーチとして野茂英雄投手、石井一久投手らの指導経験もあるジム・コルボーン氏を4年前にアジア太平洋地区担当ディレクターとして招聘。さらに日本にも常駐スカウトを2人置いている。だからこそ、今年もメジャーではさほど注目されていなかった建山の獲得に乗り出せたのだろう。

【次ページ】 MLB大型補強市場の動きに“変化”あり!?

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