オリンピックへの道BACK NUMBER
山本美憂、聖子姉妹が再び五輪挑戦。
女子レスリングの熱い闘いが始まる。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2011/12/21 10:30
2011年10月の全日本女子オープン選手権で優勝した山本美憂(左から2人目)を祝福する弟の山本“KID”徳郁(左)、妹の聖子(右から2人目)、父の郁栄氏(右)。美憂は2011年、7年ぶりに現役復帰を果たした
聖子の練習相手を務めた美憂も五輪の夢を再び追う。
美憂は、今年の6月に現役に復帰した。美憂にとって、刺激となったのは聖子との練習だった。パートナーとして聖子の相手を務めるうちに、気力がよみがえったのだ。
「体も動くし、またマットの上で試合がしたいと思いました」
そして目標を、このように表現している。
「ロンドン五輪の金メダルはプランの中に入っています」
10月には全日本女子オープン選手権に出場して優勝。全日本選手権の出場権を得ると、同じ月に、カナダへ強化のため遠征し、大会に備えてきた。
2人の父、郁栄氏は、ミュンヘン五輪の日本代表だが、オリンピックへの思いをこめて、ミュンヘンにちなみ「美憂」、聖火から「聖子」と名づけたという。
その思いを受け止めて、姉妹はオリンピック出場を志し、一度は夢破れたものの、再びマットの上に戻ってきた。これまでかなわなかったオリンピックへの切符をつかむために、ハードな練習を地道に重ね、大会を目の前にしている。
立ちふさがる強敵を倒す以外に五輪への道はなし。
オリンピックへのハードルは高い。
48kg級には、小原がいる。小原もまた、51kg級で6度世界選手権優勝を果たしながら(当時は旧姓の坂本)、51kg級が五輪実施階級ではなかったことから、オリンピックに縁のなかった選手だ。48kg級に落とし、30歳の今、ようやくオリンピック出場を手にしようとしている。
そして63kg級にはアテネ、北京に続き3連覇を目指す伊調がいる。北京後、現役続行に迷いもあったが、決断してロンドンを目標にしてきた。
美憂、聖子同様に、彼女たちもオリンピックへの強い意志をもって、今日まで来た。
山本美憂、聖子はトーナメントを勝ちあがってこの2人を今大会で破り、さらに2012年6月の全日本選抜選手権でも勝つ以外に、オリンピックへの道はない。
オリンピックという檜舞台への執念が交錯する、熱い大会が始まる。