ベースボール・ダンディBACK NUMBER
ガイエルに続くオモシロ外国人は、
中日のセサルで決まり?
text by
田端到Itaru Tabata
photograph byTamon Matsuzono
posted2010/03/30 12:00
開幕わずか3試合で評価が急激に上下するセサル。
来日当初は、尊敬するプレイヤーに同じドミニカ出身のマニー・ラミレスの名前をあげ、あのドレッドの髪型もラミレスを真似たものと話していたのに、いつのまにか「尊敬するプレイヤーはイチロー」と、変わり身の早さを見せる。
外野手としての起用が予定されていたが、荒木雅博のケガにより、二塁を守ることに。落合監督の高い評価は変わらず、開幕から「2番セカンド」のスタメンに抜擢される。
しかし、開幕試合からいきなり失点につながるエラーやファンブルで、内野守備の不安をのぞかせる。打撃でも2三振といいところなく、途中交代という暗雲たれこめるスタート。気の短いファンからは、早くも起用への批判が噴出する。
が、2戦目は先制点の口火となるヒットを放つなど、存在感を示す。さらに3月28日の3戦目は、またしてもタイムリーエラーをやらかし、中日ファンをどん底に突き落としたかと思えば、延長10回に永川勝浩(広島)からサヨナラ安打を打って一躍ヒーローに!
期待させておいて、落とす。落としておいて、一気に上げる。まだほんの開幕3試合でこれだけ上がり下がりの激しい選手は、なかなかお目にかかれるものではない。
打席での落ち着きのない仕草や、イージーなゴロをぽろりとやった時のコミカルな動きも含めて、この振り幅の大きさ、キャラクターの強さこそ、外国人選手の魅力ではないかと思う。名古屋に降臨したラスタマンが、2010年の中日を盛り上げてくれそうだ。
外国人選手は“異文化を教えてくれるリスペクトすべき存在”。
私はいわゆる「おもしろ外国人」とか「ネタ外人」と呼ばれる個性的な外国人選手が好きである。プロ野球選手に対してこのような見方を好ましく思わない人もいるのだろうが、私の中では子供の頃からずっと、個性的な外国人は“異文化を教えてくれるリスペクトすべき存在”として刻み込まれてきた。
爪楊枝をくわえて打席に立つカークランドを初めて見た時の好奇心。もう名前も覚えていないが、マスコットバットを3本束ねて素振りをする怪力の外国人打者への驚き(もしかしたら『巨人の星』のオズマと記憶が混ざっているかも知れない)。噛みタバコやチューインガムを吐きながらプレーする選手への違和感。ワニを食べるパリッシュに、神のお告げで国へ帰ってしまったグリーンウェルに、ライオン丸に、サモアの怪人に……。今季からヤクルトに加入したデラクルス投手はほとんど打席経験がなく、人生でまだ1本もヒットを打ったことがないという、日本人選手では考えられないプロフィールの持ち主だ。また、外国人選手を見ていると、野球とは個人と個人の対決のスポーツなのだということを再認識させられる。
本コラムは今回が最終回となる。今年もまたおもしろ外国人たちが、日本人の規格では計れない言動やプレースタイルで、プロ野球に彩を添えてくれることを願う。